花組『二人だけの戦場』感想 民族を守る連邦軍上官達の真実 骨太な法廷モノ 信念は実を結ぶ




もうすぐ大型連休も終わり。皆さまいかがお過ごしでしたでしょうか?旅行行ったり、友人や家族にあったり、突然大掃除したり、お天気にも恵まれたので有意義な時間でした😃。

そんな中、花組『二人だけの戦場』をライブ配信視聴しました🙋。正塚晴彦先生が作り上げた、民族問題に向き合った軍人とジプシーの人たちの、かなり骨太な作品でした。29年ぶりの再演、初演は雪組 一路真輝&花總まり主演という事ですが…

見所たっぷりの、大変面白い芝居だった🤔

私好み。正塚先生が考える、本当の平和を守るとは?人として民族の違い、考え方の違いをリスペクトする、かっこいい生き方、生き様。けっして表舞台には出てこない本物のヒーローの物語を、法廷陳述という形で丁寧に、男達の説明台詞も心地よく胸に響きました。

確かに宝塚らしくない、っていうか、よくこの作品を作り上げたなと、花組メンバーに感心しました👏👏。
一からお芝居を勉強したと、トップスター柚香光がご挨拶でありましたように、みなまるで別人のように、架空の(東欧辺りかな)連邦国家の男達になり切ってリアルに演じていました。気迫が伝わってきた😃。

なんといっても、
ハウザー大佐(凛城きら)
民族の長シュトロゼック(高翔みず希)
この2人の友情、生き様のカッコいいこと😎。二人だけの戦場って、この2人じゃないかと思ったくらいです。

ええええ、劇場で観たかったな~、きっと緊迫した雰囲気に包まれる劇場だったでしょうね。

簡単なあらずじ※ネタバレあり

士官学校を卒業した、真っ白な軍服に身を包むキラキラの若者、ティエリー・シンクレア(柚香光)と親友クリフォード(永久輝せあ)。2人は奇遇にも同じ場所、民族問題で危険なクロイツェルへの配属を希望していた。

街で偶然、軍の男3人・ノヴァロ(綺城ひか理)、ダルトン(天城れいん)、ザッカ(鏡星珠)にからまれたジプシーの踊り子・ライラ(星風まどか)と兄アルヴァ(希波らいと)に出会い、シンクレアが2人を助ける。
ジプシーは旅をする。またどこかで出会えないかと、ライラに心を奪われる😍。

クロイツェル基地のハウザー大佐(凛城きら)とクェイド少佐(航琉ひびき)。
大佐は、地元のジプシーでルコスタの長 シュトロゼック(高翔みず希)の意向を尊重しながら、お互い戦わず共存するやり方を模索していたが、少佐は軍人として罰すべきものは罰したいと、血気を抑えられずにいた。

赴任早々、大佐の気持ちに共感するシンクレア😃✨。

連邦制を敷くこの国が、民族問題とどう向き合えばいいのか、基地が無くても平和的でいたいと、軍人の家系でありながら常に考えていたシンクレアにとって、ハウザー大佐は尊敬すべき人物だった。理想主義者と言われようとも、何か方法は無いか、考えていた。

偶然にも、シュトロゼックの娘がライラだった😊。旅から兄と帰ってきて、2人は再会を果たした。

シンクレアは臆せずジプシーのカフェで皆と分かち合い、楽しく時を過ごした。
そのカフェの女主人エルサ(朝葉ことの)と恋人同士のラシュモア軍曹(羽立光来)の姿を見る。ジプシーと軍人が恋に落ちる、そんな事もありだなと、シンクレアとライラが希望を感じる祭りの日。

やはりこの2人、愛し合ってしまった。どうしようもできない。自由を愛するジプシー達が自立し、税金を払わず生きていくため、ルコスタ独立をかけて戦う時が来るかもしれないのに…。

ルコスタで爆破テロが発生する。旅から帰ってきたアルヴァが仕掛けたと疑いが上がる(本当は、アルヴァが原因では無かったが)。これで5人目の死者が出ていると、クェイド少佐の希望もあり、任意の事情徴収を行う。

ジプシー達の不安は募る。たとえ兄の仕業だとしても、ライラは決して身内を売る事はしない。シンクレアはライラを信じ切れるのか。。

小さな火種をキッカケに何か起こるか分からない。相手側の蜂起を利用して、内紛の大義名分を得て、一気呵成に攻撃をかけ、独立を果たす。既にルコスタは、周辺の小民族や近隣国との交渉を経て、連邦政府からの独立をドミノ倒しのように実現する話はあったと思う。

ハウザー大佐はそれを承知の上で、シュトロゼックを人として尊敬し、ある意味見て見ぬふりをしてお互いの領域で睨み合いを継続していたのだろう。時間稼ぎ、内戦回避の策だった。だが、とうとう事は動いてしまった。

全ては徒労だったのか…。

シュトロゼックは、ハウザー大佐、シンクレアに一緒に来ないか、つまり軍を裏切り逃げないかと誘う、友人として。どうやら連邦本部側は、クロイツェル基地に援軍を出さず見捨てる可能性もあるらしい😳。ハウザー大佐の方針に、本部は業を煮やしたのかもしれない。

しかし軍人である2人はそう簡単に職務を離れる事はできない。

テロに対するルコスタ制圧に対し、結果何百もの命を奪い、民族間の争いが繰り返される恐れ等を総合的に鑑み、ハウザー大佐は待てと制御するが、クェイド少佐の早まった勝手な行動で基地内でいざこざが起き、思わずシンクレアはクェイド少佐を射殺する…。

これが、ティエリー・シンクレアの上官殺しの経緯である。

事件から5年。この行動は、事象だけ取り上げれば、部下が上官を射殺した事件であり、銃殺に値するものかもしれない。

しかし、シンクレアの行動によって、多くの命を奪う事は免れた。弁護人で親友のクリフォードは説明する。
親友として当時は、あまりルコスタに関わるなと、身の安全を考えろとシンクレアに助言をしていたが、結果、自身にとっては最悪の事態となってしまった。

クリフォードの供述もあってか、銃殺は免れ終身刑となる。

15年が経ち、状況は変わる。ルコスタとの国交が正常となり、シンクレアに特赦が出る。
すっかり落ち着いて大人になったライラが、彼が幽閉されている場所に現れる。2人はずっと愛し続けていた。毎日朝起きるとお互いの事を思った。やっと2人の戦いも、終わったのだ。

信念。願い続ければ、いつかきっと出会える。

ライラは、愛する事をずっと辞めなかった。結婚は望まないけど、愛する事は止めないと。ジプシー女性の逆境を生き抜く力なのか。親友クリフォードの働きもあって、最後は良かったなー。

そんな感じだったかなと。

上官殺しの真実

1人の命を失ってしまった事は否めないが、軍人とは命を懸ける職務。

軍の中にも色々な境遇の人がいて、大佐が立派な考え方と思っても、それは他の人にとっては反逆行為だったりする。常に影響を最小限にするプランA,B,Cを頭にいれて動くのが、軍上官なのだろうなと。この緊迫した状況、そして相手が敵であっても、人としてどう行動するかを見極める事。大切なんだと思う。

今、日本国内でも、自衛隊のヘリコプターが落ちて上官達が複数人亡くなった事件や、若い機動隊員がピストル自殺(本当なのだろうか)で亡くなったとか、日々のニュースを見ていると、何かが動いているのだろうと勘繰ってしまう。

そんなリアルな国内状況と、この『二人だけの戦場』の架空の国の物語がリンクして、個人的には頭がグルングルンしてました。火種を起こしたくない、戦争なんて、したくはないんだって。

結果的には、ティエリー・シンクレアという真っすぐな若者の咄嗟の行動は、ウルトラCレベルのミラクルな展開となって?彼は助かり、待った末にその当時では一緒になりえなかったであろう、ライラとの人生も開けそうな最後だった。

大切な物をどちらも諦めない。民族が違う、考え方の違う人同士であっても。何か策はあるのかもしれない。

素直なティエリーとライラ

この大人達の策略の中に、真っすぐでキラキラなティエリー演じる柚香光✨と、ジプシーの娘ライラの星風まどか。若い2人の気持ちは止められない。

いいものは良いし、周りの空気を読むなんて、若くてまだできないし。でもその真っ直ぐな気持ちこそが、事態を変える、思いがけない展開を生む可能性がある。若さこそ武器🔫。

汚れを知らぬ若者らしく、れいちゃんの姿は神々しかった。
イチロが演じていたのか~わかる気がするな~。ちょっとした真面目な空気が面白さを生むスターさんでもあった。その光が、闇に転落する物語が面白さ。

ジプシー娘って、まどかちゃんのイメージがあるなぁ。正塚先生お得意の、娘役の「うん」というセリフ。

うん👧。

これがお似合いです。離れてしまうティエリーへの辛さを泣きながら、鼻水すすりながら気持ちを訴えるシーンは、等身大の少女らしさが愛らしいというか😊。大先輩・花總まりのお役に体当たりでした。

戦争って、対立って、占領って、連邦制って、なんだろうなって、考えちゃいますよ。

早乙女幸、りんごさんのお役だったエルサは、朝葉ことの。歌姫でもあり、雰囲気よかったな~。
ラシュモア軍曹の羽立光来とのカップルに親近感を持ちました。いい旦那、選んだねっ👌。エルサの優しいサポートもあって、きっとライラも頑張れたと思う。

法廷陳述、骨太な芝居展開+クスッ

被告弁護人の検事(峰果とわ)と、シンクレア弁護人の親友クロフォード(永久輝とあ)。
ギターの音色が響く中、2人が突然舞台に登場する事で、ええ、宝塚風なプロローグとかないんですかい?みたいな(笑)。
一気に真面目な空気に、映画のようなシリアスなシーンに引き込まれます。

説明台詞が難しいだろうな~。とても聞きやすかった👏👏。とくにひとこの、ちょっとしたふてぶてしい感じの言い回し。笑わないひとこが大好物😊な私としては、じーーっと見てても楽しいです。

クリフォード役のひとこ、こういう芝居はお得意だと思う。なかなか見ごたえありで、れい&ひとこ、このコンビをこれから多々目にするのかな~と思いながら 2人の掛け合い、クスッとする場面も、もう1回、もう1回!また観たい😆。楽しかったです!(ばっさ、ばっさ&頭ゴ~ン😣)

ジプシーの男、アルヴァ役の希波らいとが、たくましくていい雰囲気だった😃。終始こわおもてで、でも実は父やティエリーに協力的な面もあって。この偏見が、人を狂わせるんですよ。

ティエリー、クロフォード、アルヴァ、3人男のダンスナンバーがあって、なかなか新鮮な3名が揃い、新しい風を感じました~。

酔った勢いでライラに絡む軍人、ノヴァロ役で登場した、お帰り花組・綺城ひか理。
彼の逆恨みがずっと続いたせいで、ティエリー・シンクレアは裁判にかけられてしまう。軍の機密にすべき事案をわざわざ表沙汰にしてしまった張本人😠。

軍人達は直立不動で匍匐前進。ピシっ!としながらも、酔ったら暴れ者。このあたりの成り切り方、あかちゃんの演技が光りました(ひか理だけに)。

そうーそうー、

ハウザー大佐はダジャレを愛する男だった~。

凛城きらさんのお役は、どれもこれも大好きですが、とくにこのハウザー大佐は別格ピカ一じゃないでしょうかっ😆!真面目な芝居にダジャレを小出しにテンポよく😋、これが正塚先生の真骨頂。面白かったな~。

正塚先生にりんきらあり、ここでも重要な役回りでご登場でした。れいちゃんも惚れる男。次のご出演も楽しみにしています。

↓カワイイ。デリシューの時のスチールですね。

短い期間の上演ですが、1回1回濃密で集中したお芝居を、演じる側こそが一番楽しい作品ではないかと、思います。沢山の深い言葉が詰まった作品。戦時下という勢いと緊迫感を持って、この架空の国を生き抜いて、多くのメッセージを私達に感じさせて欲しいと思います。

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