『蒼穹の昴』あらすじと感想2 彩風咲奈&朝美絢 国を守る宿命 我らを導け正しき場所へ




東京宝塚劇場はピスタチオグリーンのホワイト・クリスマスツリー。もうそういう時期なんだな~。

『蒼穹の昴』回数を重ねると、物語だけでなく、あの素敵で壮大な曲、中国風の音楽、余韻を残しつつ物語的にスムーズな場面転換、色々心地よく感じて、本当に素晴らしいなと更に大好きになります。
あの時代の中国にタイムスリップしたかのような、時空を超えた感覚になります。最近そういう事が多い。何だろう…、人は時空を超えられるようになってきたのかな🤔。

簡単なあらすじ※ネタバレあり

19世紀末 清の時代。河北出身の青年 梁文秀(リァン・ウェンシウ)(彩風咲奈)は科挙の試験に首席で合格し、役人として紫禁城に上がる事になる。義兄弟の契りを交わした同郷の李春児(リィ・チュンル)(朝美絢)と妹の玲玲(リンリン)(朝月希和)。とても貧しく、両親のため、生きるために日々駆け回っている。

白太太(パイタイタイ)(京三紗)の占いによると、文秀と春児には昴の星が付いているという。文秀は紫禁城で大臣となって国のために働き、春児は西太后(一樹千尋)のお宝を絡めとることが出来ると…。2人の占いは当たるのかどうか?
また、文秀と玲玲は不思議な糸で結ばれているという。その後、身寄りのなくなった玲玲を、文秀は北京に連れて行く事になる。

文秀はその才能と型破りな発想が乞われ、楊喜楨(夏美よう)率いる改革派のメンバーとなって若き光緒帝(縣千)に仕える。同じく試験に2番に合格した順桂(和希そら)、3番合格の王逸(一禾あお)と共に。

貧しい春児はにっちもさっちも行かぬ身の上で、男を捨て宦官として紫禁城に上がる。西太后の前で京劇を披露、その才能を見初められ、占い通りに西太后の付き人となる(ワンチャン・ゲット👍)。

2人は違う形で紫禁城まで上り詰め、再会する事が出来た😃。仕える人は違えど、志を胸に国の為生きて行こうと、昴の星🌠に誓う。昴の星よ、2人を正しき場所へお導きください…。

さて紫禁城では、西太后を担ぎ上げる、栄禄(悠真 倫)率いる保守派 VS 光緒帝に知識を与える楊喜楨、康有為(奏乃はると)率いる改革派(開国派)が対立している。

外国からの開国の圧力にどう立ち回るのか、今や喫緊の課題となっている。楊喜楨は、天津にいる李鴻章(凪七瑠海)に後ろ盾となって欲しいと、軍人の父を持つ王逸を遣いに出すが、西太后なりのお考えがあるのだろうと、その申し出はやんわり断る。逆に王逸の利発さを買って、軍に来ないかと誘う。その後、日清戦争に赴くが敗戦となり、引退を決め北京に帰って来る。

いよいよ改革派は、西太后の勇退を促し、光緒帝率いる若き志士に開国のかじ取りを任せたいと考えている。光緒帝の婚礼が済み、西太后と楊喜楨はお互い引退(勇退)する事を約束する

その最中、楊喜楨が暗殺される…。

この暗殺事件より、保守派と改革派の策略、騙し、暴走、転がり落ちるように悪い事が続いてしまう。
楊先生から全てを託された文秀は、この難局に自分を奮い立たせ、心を鬼にして国のかじ取りを担って行く。

2幕。文秀は、なんと楊喜楨の暗殺を隠し、”広州に戻ったと嘘の手紙”を西太后にと春児に託すが、いつもと様子が違う事を春児に見破られてしまう(あー、余計なことを‥😟)。実は栄禄が楊喜楨を殺したと白状し、今度は西太后暗殺の噂があると忠告をする。

西太后を良く思わない順桂は、満州一族の使命として、引退するため頤和園に向かう西太后を爆弾で命を狙う。しかし計画は失敗、自爆する💥

順桂による西太后暗殺未遂の報告を聞く光緒帝。今こそ改革を!と、康有為の導きにより急性な改革を実行するが、理想ばかりで官僚達が付いていけず、この改革は失敗に終わる。文秀に相談もなく進めてしまった光緒帝は反省する。

いよいよ栄禄率いる保守派が、光緒帝と改革派を捉えるため紫禁城に向かっている(ヤバい…)。
文秀は最後の賭け、軍の袁世凱(真那春人)に依頼し、逆に西太后・保守派を捉えて欲しいと依頼する。

どっちがどっちの命を狙っているのか、嘘か誠か、分からなくなってくる🤔。お互いを逆賊と言い合い、大義名分を掲げて”自分の正義”のために賭けに出る。

結局、袁世凱は栄禄側(保守派)に寝返る。光緒帝は南の島に幽閉され、改革派メンバーが捉えられる事となる。文秀と光緒帝の賭けも、失敗する。

もう後がない。日本の新聞記者 岡さん(久城あす)の助けを借り、伊藤博文(汝鳥 伶)に面会を頼む文秀と譚嗣同(諏訪さき)。伊藤からのメッセージは、

敢えて難しい道を選ぶこと(=生き延びる)。

この世に居ない同志達の声が聞こえる。文秀、ここで果てるのではなく、生きてこの国を守れと。そして春児が泣き叫ぶ、なんで文秀が死ななくてはいけないんだ?と。玲玲はどうなる…。

玲玲、この言葉を聞いて、譚嗣同の決意は固まったのだと思う。改革派の1人として処刑される方を選ぶ。淡い恋心を抱いていた玲玲がしっかりと見守る中…。

最後は西太后の孫、ミセス・チャン(夢白あや)と鎮国公載沢(咲城けい)の計らいもあって、文秀と玲玲を脱出させる。2人は決して離れないと、日本人夫婦として船🚢に乗り込む。追いかけてくる春児とまた再会を約束し、清国を後にする。

3人の運命は、占いの内容とはちょっと違ったけども、国のため、同志のため、お互いの道を生き抜いていく。

出演者の見どころ

文秀と春児 咲ちゃんとアーサ 2人の宿命

梁文秀(リァン・ウェンシウ)(彩風咲奈)と李春児(リィ・チュンル)(朝美絢)。

正攻法で試験を首席で卒業して官僚となった文秀とは対照的に、貧しくて全てをかなぐり捨てて、芝居の心得と愛嬌、そして貧しいものにお宝を分け与えたいという純粋な心で、お城に上がった春児。

なーんとなく、なんとなく、首席入団で雪組の御曹司として育ってきた彩風咲奈というキャラクターと、その甘いマスクと体当たりの演技で2番手スターとして君臨している朝美絢が、被る設定なんですよね。兄と弟としての関係性も、今まで築き上げてきたトップと2番手という立場がピッタリで、2人の演技にくぎ付けになります。

特に春児を見守る文秀さんが、いつ見ても涙を流している😭。泣いて泣いて、本当に毎回、毎回。良くここまで来たなと。本当のお兄さんのように。
そして楊先生から託された2幕目からは、全ての政治の責任を取るべく、同志の志を思い、国を良い方向へと導くためにどうすれば良いかと、苦悩がにじみ出ている。最後に生き残る事を決断するまでの間にも、文秀さんの涙が止まらない😭。

公演1回1回が、本当に役を生きているのだなと。物凄い集中力と作品に対する熱い思いを感じます。その姿勢に見ている私達も感情移入してしまうというか。

2人の歌が全てGOOD👍!劇場内に力強くストレートに響き渡ります。

文秀と春児を演じる、彩風咲奈&朝美絢
W主演のようなこの2人が、この作品のMVP賞でしょう🙆、これは。

昴の星に導かれ、国を守る宿命を背負った2人。

この2人が雪組で出会い、この作品を演じている事もまた、宿命なのかなーとか、思ったり。

専科オールキャスト!

過去の宝塚作品は結構専科さん勢揃い!という超大作がありました。最近では珍しいのかなと思います。

まずは冒頭、占いを告げる白太太役の京 三紗さん。こっから雰囲気が出て始まるぞ~っていう気分になります。
春児の占いは嘘だった…という衝撃の告白は、おおおおおいっ!おばちゃんっ!って思っちゃたけど😮。食う物よりもおいらに夢をくれたんだ、という春児の言葉に救われます。そうだよね、嘘が誠になる事もあるんだなと。

そしてこの物語の本当の主役、裏ボス、裏MVP賞なのが、西太后役の一樹千尋さんです!
まずは本当にお美しい。あのお衣装と威厳ある佇まい。あの方が京劇役者かと思ってしまうほど。今回の作品で、私個人の西太后へのイメージが変わりました。

頤和園でのツァイテンを思う気持ち、小さな小さな子供への愛情、あのソロ曲は涙涙😭😭でドラマティックです。あれは一樹さんしか醸し出せない味です。
年老いた身体がニクイィィぃ…。いいえ、もう十分お働きになったのだから、お休みくださいと言いたい。

紫禁城内の重鎮達、楊喜楨役の夏美ようさん、栄禄役の悠真 倫 まりんさん。見ていて惚れ惚れする程、敵に不足無し!
お髭をたまに摩る楊先生が可愛い。栄禄は歌舞伎か文楽人形みたいな目の表情。まりんさん最高です👍。

幕が開いて飲み屋の親父として登場し、最後の最後にドーン!伊藤博文として登場するのが、雪組には連続出演中の汝鳥 伶さん。場が締まるよね、本当に。いつ登場するのか、本当に楽しみです。

最後にポスターにも登場した、国を思う心は本物!本当に惚れ惚れする憂国の志士・李鴻章役は、凪七瑠海。立ってるだけで、言葉を少し発するだけで、この人は違うなと感じさせます。流石、専科の域だなと思う。

栄禄に剣を突き刺し、天命があるか試そうとするシーン。待ってました!と思いました。一番の元凶は、やはり栄禄だった。

順桂、王逸 の歩む道

順桂(シュンコイ)さん演じる和希そら
愛新覚羅の太祖 ヌルハチに仕えていた一族出身だと、自己紹介しています。全てを牛耳る西太后という女を許せない、我慢ならない。命に代えても皇帝をお守りするため、早急だと皆に止められますが、1人で爆撃を狙う。心静かに故郷を思い、事を進めるあの衝撃のシーンが忘れられません。

その前のアヘン窟の場面も美しかった。布と踊りと、アヘン中毒者にまみれ、やはりこの時代、アヘン問題は切っても切れないものかなと。

文秀が科挙の試験の際、孔子様の化身に試されたのではないか?と発言した、とてもピュアなシュンコイさんという一面もあるなあと思いました。妻も子供もいて、宮廷の女子たちはガックシ😣。

王逸(ワンイー)演じる一禾あお
元は軍人の父に生まれ養子に出され、科挙の試験を受ける事が出来た。お名前通り、青い青年という感じで😊、何でも好奇心がありポンポン発言する。李鴻章に声を掛けられ軍に異動。

文秀あわせて三人三様のキャラクター。思いがけない、いい味出してる配役になったなと思います。彼が入ると、ちょっと違うキャラの人間が来たな、という雰囲気を感じました。

舞台に息づいた玲玲

この舞台がサヨナラとなった玲玲役の朝月希和
舞台を観ていると、演じているというよりは、玲玲そのもののような気がしました。文秀さんとのやり取り、様々な人達とのやり取り。表情、反応が、玲玲ならこうするな、という境地だったと思います。

日本へ旅立つ船の上で、ポカーンとしている顔が印象的だった。あまり良く分かっていないけど、泣いちゃいけないとだけは思っていた。とにかく文秀についていかなければ、同志のために生きなければ、その使命に圧倒されている感じ?なのかな。お兄ちゃんの声にいち早く気づく所とか、嘘のない玲玲の目に好感が持てました。

あと個人的には、譚嗣同(タンストン)さんだな~。本当に微笑ましい。諏訪さきちゃんの訛りがね😊。玲玲と2人は似たもの同士、貧しい出。初めて見た可愛いピュアな女性だったのかな?普通の人代表みたいで、こういったサブストーリーも嬉しいです。

豪華絢爛 存在が皇帝そのもの

光緒帝の縣千。もう彼しかいないでしょう!って思っていました😆。
若くして抜擢され、早々に国を(組を)背負う立場である。でもちょっと優しすぎて、叔母上をないがしろには出来なくて、育ちが良くて、歯がゆい存在。立派なお衣装、玉座、これまたとてもお似合いでした。

周りに仕える女性達。圧巻です!

副組長の千風カレンさんの小芝居(笑)が面白い😅。周りの女官達も一生懸命アピール😍。一糸乱れぬ舞、歌声、美しいです、皆さん。

京劇の皆さん、宦官の皆さん

春児がお世話になる安徳海 演じる天月翼。これこそ専科級の芝居でしょう~😆。
いわば正社員としてお仕えするのでなく、芸能や宦官という立場で裏方としてお仕えする道もあるんですね。

生涯たった一人の弟子だと言った、京劇の花形役者 黒牡丹(ヘイムータン)役の眞ノ宮るい。まるで「ガラスの仮面」の月影千草…。アーサと2人で舞う姿は、常に拍手が自然と起こります👏👏👏。
個性豊かな仲間達も面白いんですよね、女形らしき役者の可愛いこと。皆仲良く肩寄せ合って、若者達がお城で頑張るよう応援している姿が美しいです。

他にも沢山まだいるのですが、一旦ここまでかなと。

最後に、この難局に手を差し伸べたキーマンは、久城あす 演じる岡さんだったし、やっぱり裏切り者、悪者(小物😋)は、真那春人 演じる袁世凱なんだな~っていう、雪組鉄板の配役、役どころに、満足・満足であります!

我らを導け正しき場所へ

西太后と光緒帝。2人共、国を良くしたいと思っているし、お互いを尊重しているのに、どうしても役人に操られ、担ぎ上げられ、争いに巻き込まれてしまう。保守派と改革派。お互いの正義のため、どっちも正義。

正義の反対は、もう一つの正義。

天命を持つ人間がトップに君臨し、争いなく穏やかに、バランスを持って舵取りが出来れば良いのだけど、外圧が影響して、なかなかそうも行かなくなってくる。日本も同じような難曲を立ち回った、明治政府時代。

国を開けば、売国奴呼ばわりされるし、開かなければ戦争で植民地となって分割されてしまうし。本当に、どうすれば良かったんでしょうね…。

日本は維新に成功したと言われていたけど、100%成功とは言えないでしょう。きっと政治とは51%以上上手くいけば成功、という位の成功率なのかもしれない。

今の中国は王朝を捨て、共産党に乗り換えたのか?共産化する事で人民は解放されたのか。
日本は第2次大戦に負けたけども、天皇制と元の領土は守られている格好にはなっている。きっと裏で密約を交わしながら今の体制を維持できているんじゃないかと思う。それも政治、舵取り。最終的に何を守るかなのかなと。

日中問題とか、日韓問題とか色々あるけども、こういう歴史物語を見ると、お互い近い国同士、亡命したり、助言したりしてるんですよね。

先日の福岡遠征で、下関近くまで観光に行った。門司港はとてもヨーロッパのような港町で、大連やらロシアやら、色々な国の船が寄港していたことが、今でも感じられる。すぐ目の前に伊藤博文がいた下関があった。
文秀、玲玲もここに立ち寄ったのではないかと、なんだか蒼穹の昴の続きを妄想し、時空を超えた時間でした。

歴史に学び、諦める事なく自分が出来る事を真摯につとめ、最終的には、我らを正しい道へと導いて欲しいと、心から願い、思う所です。

 

とにかく舞台が美しい

まあ色々難しい事は置いておいて、原田先生の演出が、本当に美しい✨。

陰翳礼讃(いんえいらいさん)という言葉があるけども、あの「殉情」の谷崎潤一郎の作品。この舞台には沢山の影が良い効果をもたらしている。

扉の格子の影とか、爆発の瞬間の演出(光と影だけ)とか、真っ暗闇の中、スポットライト1つで演者を照らすその陰とか。

そして場面の繋ぎが美しい。中国風の音楽、胡弓の音色、主人公の表情の余韻が効果的。パッと目の覚めるような王宮の場面があったり、地方の青い空、赤い空、暗い夜空、そこに浮かぶ昴の星、何処までも続く赤い壁等、どれもこれも美しい。
1幕、盆や銀橋を巧みに使って、婚礼の儀と京劇役者達のやり取りが面白いな~と思った。

フィナーレの男は、和希そら。そらの歌声が会場中を包み込みます。この瞬間がたまらなく贅沢ですぅ😃🌠。歌詞もイイしね~。観客のオペラが、そらに一点集中している光景がまたね😊、何とも言えない気分になります。

電飾がピカピカして、本当にゴージャスなフィナーレのスタートとなります。以前記事に書いたように、フィナーレナンバーの見どころもたっぷり!いつか原田先生のショーを観たいと私は思っている(しつこい)。
特にデュエットダンスからのパレードのオーケストラが、これがまた本当にカッコイイんですよね!お洒落でゴージャス✨。

最初から最後まで、本当に美しい舞台だと思います。まだまだ、千秋楽まで蒼空の昴の世界に浸りたいと思っています🙆。

そして、スカイステージ貸切公演に当たったのよ~🎉🎉。
初めての事でビックリしました。嬉しい♬ありがとうございました!!

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