劇団四季ミュージカル『パリのアメリカ人』 成熟された難易度高いブロードウェイ作品
横浜KAATで現在上演されている、劇団四季『パリのアメリカ人』を観てきました!
渋谷のオーブでも上演されていたのですが、私個人的にKAATの劇場の方が好きです。オーブよりもキュっとして赤い客席に包まれているような丁度良い劇場。1年前に『ノートルダムの鐘』を四季で見て号泣し、今回はパリアメで唸りました🤔。
これって、宝塚では無理ですよね。
キャストは以下の通り。
ガーシュインのお馴染みの曲がたくさん
1952年の映画作品『巴里のアメリカ人』をブロードウェイミュージカルに仕立てたもの。
映画ではジーンケリー始めとする有名どころの役者が出演していて、音楽はアメリカのガーシュイン兄弟。宝塚のショーでおなじみの曲ばかり。
アイガッタリズム♪ ス・ワンダフル♪ パリのアメリカ人♪ バットノットフォーミー♪
自然と体が動き出す。ジャズの要素もあって、かなりオシャレです!
そういう意味では『オンザタウン』や『20世紀号に乗って』のような、王道ミュージカルって感じです。
実は深い内容の物語
あらすじを知らずに拝見したのですが、それが凄く良かった。
このミュージカルは、実はめちゃくちゃ深いお話なのです。
戦争は終わった。ナチスドイツの占拠から解放されたパリが舞台。
祖国に帰らずパリに残るアメリカ人2人・元軍人の画家を志すジェリーと、音楽家のアダム。
ドイツ占拠時代に陰ながらレジスタンスに協力していたフランス人のバレエ団経営者と、その息子アンリ。
そこに出資したいと願うリッチなアメリカ人女性。フランス人女性のバレエダンサーリズ。このパリアメ達が色々な形で絡み合います。
パリは今も昔も芸術の街。
そのパリに何かを残したい、認められたい、何かを手にしたいと思うアメリカ人。形式や格式ばかりを重んじるパリに、新たなアメリカ的自由な発想や、お金を贅沢に使って何かを得たい、私利私欲な思いもあります。きっと当時のアメリカ人にとってもそんな思いはあったのではないでしょうか。
あらすじを先に聞いていたら、「なんか暗い物語じゃないか…」って思っちゃいますが、実際に舞台を見ると
バレエ演出が際立つ、歌やセリフに頼らないダンスとアートの世界!
まるで観る人の教養が試されているような。
知的水準の高い、まさに
成熟された完成度の高い・難易度の高いミュージカル✨
なのです。
トニー賞受賞の新演出 モダンバレエの素晴らしさ
2014年に上演され、翌年にブロードウェイに進出。トニー賞で振付賞、編曲賞、装置デザイン賞、照明デザイン賞を獲得した、パリアメの日本初演版。この映画はずっとミュージカル化されてなかったんですね!
最近お馴染みのデジタルマッピングや動画技術がふんだんに。仕掛けも沢山ある中で、やっぱり際立つのは
モダンバレエ演出の秀逸さ👏
英国ロイヤルバレエ団出身の方が演出と聞いて、なるほどと唸りました。
最近ではバレエ「不思議の国のアリス」がとっても面白く、映像とダンスと色々ミックスされた、まさにマルチメディアミックスのようなバレエ作品で。
これを踊るのって、至極至難の業だと思う!男性も女性も。バレエ団のダンサーでも大変じゃないかな~。劇団四季の皆さんはものすごく上手でしたよ。
ダンスシーンが結構長い。最長で15分位ずっとジェリーとリズ2人で踊りっぱなし?
2人の気持ちをモダンダンスで表現するわけです。ダンスシーンの舞台演出はとてもシンプルになっていて、照明の変化のみ。それがまたモダンでダンスに集中できました。
ラ・ラ・ランドがオマージュ
このポスターにもなっている、月夜に二人、リズが黄色いワンピース。これって去年アカデミー賞を受賞した「ラ・ラ・ランド」にオマージュされた一場面でもあります。1950年代に沢山のブロードウェイミュージカル、ミュージカル映画が生まれましたが、その中でも完成度が高い物が、この「パリのアメリカ人」なのかーと思いました。
この楽しさは、実際に生で、できれば2階、3階から見てもらえると、舞台演出の美しさを体感できると思います。是非お見逃しなく。この内容だと宝塚で上演するのは、ちょっと難しいです。バレエシーンの、特に男性陣のスキルが半端なく、女性では無理です(笑)。
観ないのは勿体ないぞ!
当日券含め、まだ発売されていますので、確かに観ないのは勿体ないかも。
そしていつか宝塚でも、こんな凄いお洒落なミュージカルを演じる事があったら、応援したいな~。
劇団四季『パリのアメリカ人』
KAAT 神奈川芸術劇場〈ホール〉
第一幕 約1時間15分、20分休憩、第二幕 約1時間15分:合計 約2時間50分
あっという間に終わっちゃったよ!
横浜公演:2019年3月18日~8月11日(日)千秋楽
名古屋公演:2019年9月1日(日)開幕
京都公演:2020年2月上演決定
※ご注意:もし初見で舞台を観たい方は、以下紹介動画は見ない方が良いと思います…(掲載しておきながら笑)。ネタバレが結構含まれているので。
おまけ:トニー賞ノミネート「キス・ミー・ケイト」
6月10日にトニー賞授賞式があります。
今年ノミネートされているリバイバル作品は、王道ミュージカル「キス・ミー・ケイト」と、衝撃的な演出で話題の「オクラホマ!」で二分されていると、宮本亜門さんがWOWWOWでお話されていました。
時代の波が、ミュージカル作品にも物凄く影響していて、古き良き時代を再演する事と、新解釈で暗い世の中にも目を向ける社会派ミュージカルが、今の時代に必要とされているのか、色々問題提起されていますね。
個人的にはどっちもあってよい。どっちも観たい!
大浦みずき なーちゃんのトップお披露目だった「キス・ミー・ケイト」宝塚版をまた観たい!どこの組でやれるかしら。やっぱり、雪組 だいきほ、かなぁ。