東山紀之主演 舞台「チョコレートドーナッツ」感想 マルコ少年の養育権を巡るゲイカップルの法廷物語 素敵な歌とショーと共に
PARCO劇場で再演「チョコレートドーナッツ」を観劇してまいりました。
初演はコロナ中止期間にあたって観れなかったので😢、再演してくれて嬉しかった。本当に観れてよかった!
映画の作品を日本で初めて舞台化。監督は日本が誇る演出家・宮本亜門。
チョコレートドーナッツという邦題で、原作は「ANY DAY NOW(いつの日か)」というんですね。これは邦題戦略勝ちで、女子的にはなんだか素敵、おいしそう~♬って食いついた短館映画だったと思う。そこからジワジワ話題になり評判になった。
映画について熱く語ったのは、以前の記事でもお伝えしました。この映画が大好きでして。
ゲイバーで踊るルディ(東山紀之)と、店で知り合った検事のポール(岡本圭人)。この2人のゲイカップルが、置き去りとなった独りぼっちのダウン症の少年マルコと出会い、3人が家族になろうと奮闘する法廷物語です。時は1979年。ゲイが差別を受け、法廷で争うのはとっても大変な時代だったことがわかります。
映画同様、舞台はシビアで、リアルで、どうしようもない気持ちが辛い。それでも真摯に現実と向き合った彼らの成長物語でもあります。
結末を知り、ここから皆も(客席含め)どうして行くんだ!?っていう、投げかけの意味で社会派要素もある、涙が溢れるいい話、だったなぁ。
ゲイバーのダンサー達が宝塚みたいなショーを繰り広げ、華やかな場面もたくさんあります。そこは、宮本亜門さんらしい楽しい演出じゃないかな。
個人的見どころを記したいと思います。
簡単なあらすじとコメント※ネタバレあり
公式HPより抜粋します。
<あらすじ>
1979年、カリフォルニア。シンガーを夢見ながらもショーパブのダンサーとして生活の糧を得るルディ(東山紀之)。
正義を求めながらも、ゲイであることを隠して生きる検察官のポール(岡本圭人)。母の愛情を受けずに育ったダウン症のある少年マルコ。
ある夜、ショーパブに客として訪れた検察官のポールは、ステージ上のルディに魅了され、2人はたちまち恋に落ちる。「夢はベット・ミドラーになること。」
「だったらなるべきだ」ルディが暮らしている安アパートの隣室には、薬物依存症の母親とダウン症のある少年マルコが住んでいた。ある夜、大音量で音楽をかけっぱなしの部屋に息子のマルコを一人残し、母親は男といなくなってしまう。ルディが騒音を注意しに乗り込んだ部屋には、ただうずくまり、母親の帰宅を待つ少年マルコがいた。
不憫に思ったルディは、マルコを連れ帰る。しかし、ポールは「家庭局に連絡してマルコを施設にあずけろ」と助言する。その言葉に反発するルディだったが、マルコの母親は薬物所持で逮捕され、マルコはお気に入りの人形を抱きしめたまま、強制的に施設に連れて行かれてしまう。しかし二人は、ポールの法的知識を駆使してマルコを救い出すことに成功。“いとこ”同士と偽り、生活環境の整っているポールの家で、マルコと共に暮らし始める。
初めて学校に通うマルコ。ポールはマルコの宿題の手伝いをし、ルディは毎朝朝食を作り、眠る前にはハッピーエンドの話を聞かせてマルコを眠らせる・・・。まるで本当の両親のように、二人はマルコを愛し、大切に育てた。しかし、家族になることを望む三人の前に、差別と偏見の壁が立ちはだかる。
ルディは愛情、感情の人間。純粋で素直で、思ったことを直ぐに行動に出す。真逆のポール。法的手続きを重んじる、いわゆるノーマルな人。
この凸凹コンビがうまく難題を解決していくストーリーがとても心地よい。
法律の話はいろいろ勉強にもなる。なかなか愛情だけではマルコを手元に置いておけない。
ルディ:マルコを育てたい!
ポール:じゃあまずは認められるための準備をしよう!
と、一つ一つ積み重ねてお互いに無い物を補完しあう。
マルコの一人部屋が必要。広い部屋が必要なので、ポールの家に一緒に住む事にする。
昼と夜、2人が協力してマルコの面倒を見る。マルコとの生活のため、2人は自分達の生活を変えていきます。
ポールは、ノーマルな会社の上司に目を付けられている状態。ルディの気持ちを尊重し、ゲイであることをカミングアウトし、会社を辞める。
ルディは、マルコの家庭環境を整え、裁判に有利になるよう、夜のショーパブの仕事を辞める。仲間たちも文句言いながらも、ルディが家庭を持つことに協力的だ。私たちが到底つかめない夢をつかんで欲しいと(涙)…。
自分の仕事を辞めただけではなく、マルコという魔法によって、本当にやりたかったことや、大切なものに気づいていく。
ルディは本格的にシンガーを目指す。ポールがいつものように、しかるべき手続きを、クールに淡々と行う。
歌を録音し、デモテープを配り、ある人の目に留まる。ルディは歌手として声をかけられる。
と、順調に見えるが、途中喧嘩したり、裁判で失敗したり、紆余曲折。家庭局にマルコは引き取られ、裁判で勝たないと会う事が出来ない状態になる。
ルディはどうにかしてマルコと電話で約束をする。
明日、裁判で勝ったら必ず迎えに行くから、準備しておいてね、と。
マルコが洋服をたたんでリュックに詰めている。大好きなお人形と共に…。
裁判には、ポールの学生時代の仲間が立ちはだかる。かつてポールの恋人がゲイだと噂が広まり、その恋人が自殺したという経験を持っていた。差別に負けたくない、ポールとしても長年の戦いの集大成となったであろう、この裁判。
結局、あーだこーだ嫌らしい証言を取り付けられ、しかもマルコの母親を刑務所から出所させ(きっとポールの上司に金に釣られたな)、マルコの教育権委任を取り消した。
ルディとポールは裁判に負けてしまう。何て卑劣なんだ。2人はマルコを迎えに行くことは無かった。
マルコは迎えに来ると信じて施設を飛び出す。映画では、マルコが初めて自分の意思で家出をし、ルディ達の元に戻りたいと必死に探す、感動的な瞬間だった。しかし3日後、橋の下で凍死した状態でマルコは見つかった。
家庭局とは、裁判とは、いったい誰のためのルールなんだ😤?
マルコと一緒に暮らしたかっただけなのに、色々な人を巻き込み、正義をかざして人の尊厳を傷つけ…、それでも強くなる2人の絆。本当に辛くて、茫然としてしまう。
ラストシーン。ルディは舞台に立ち、シンガーとして歌う。このシーンが、超涙涙、映画では号泣😭ものなのですが、舞台も素晴らしかった😃!
東山くんが演じるルディは、真っ黒の衣装に髪を一つに束ね、光と自由を歌う。すべての人のために。
素晴らしかった。皆が自由に愛し合える世界が、この世に訪れますようにと、私も心で願った。
客席もそうだったと思う。今回、パルコの客席がほんとーーーに暖かくて。
暖かい空間、心からの暖かい声援だった。満席でスタンディングオベーション👏👏。
ああ、なんかつらつら書いちゃいました。
ヒガシの歌手としての素晴らしさ
世代ですね、世代。私はヒガシって呼んでいた。テレビで見ていた頃😊。
舞台で初めて拝見しました。さすがの肉体美。それよりもびっくりしたのは(当然なのかな?)歌の素晴らしいこと✨。
地声で女性シンガーの歌を歌うんだけど、とっても素敵な声でした。女装して踊っているよりも(失礼)よっぽど歌一本で立っていた方が素敵!って、ルディそのものだと思いました。ヒガシにシャンソンとか歌って欲しいな~。
ゲイ特有の冗談ばかり言っちゃう、ちょっとお茶らけちゃうシーンや、マルコにお話しを聞かせる優しさや、ポールとの痴話げんか?や。。とにかく感情が体全体から溢れ出て、可愛らしいルディ。でも、いわゆるおかまちゃんとは違う、やり過ぎ感が無いクールさが、程よく自然体に感じました👍。
1幕目最後に、ショーの舞台上で、なんかよー分からんお姫様衣装に金髪の鬘を付けて踊っていた所、私何やってんだろう…って真顔になって、カツラと衣装の一部を脱ぎ捨てて、いわゆる”客席おり” 舞台から飛び出し、客席から外に逃げ出してしまったシーンは、迫力でした👏👏!
ヒガシ、近っ!って、ファンの方が小声で感動してらっしゃった😀。
一生懸命な岡本さんのポール
これだけ理路整然と、頭脳明晰に事を進めるポール役の岡本さん。見た目は甘いマスクで、どんな女性でも恋に落ちてしまうであろう、パーフェクトなビジネスマン。
純粋なルディに一目惚れ。誰もがうらやむ生活を手放しても、自分の気持ちに正直に行動するポールは、差別に立ち向かう様々な境遇の人たちの希望です。
ポールを通して色々な壁を知りました。彼らはまっとうに、1つ1つ丁寧に立ち向かい、書類を用意し、裁判に真摯に向き合った。それでもダメだった。これが現実なのだろうか。。
でもこの事実から学ぶ事が沢山ある。これをきっかけにどうするの!?って思わざるを得ない。
ほっこりするマルコの存在
この舞台の目玉である、少年マルコを演じる俳優3人。ダウン症の彼ら。映画でもそうでした。
とてもお茶目で、ダンスが好きで、モニカと一緒にダンスするシーンは本当に可愛かったですね~。案外思いがけない行動に出るところも可愛い。大好きなものは、チョコレートドーナッツ。女の子のお人形。ちょっと変わったマルコの尊厳を尊重していたルディとポール。
ルディとポールが親としてふさわしいか?という事が議論されるべきなのに、色々な差別的感情によって論点をずらされ、誰もが傷つき、最悪だった。でもこの最悪から何かが得られるのだろうか。
勇気を振り絞って、施設から家出するマルコの大冒険が、最後の最後でがんばれ!!って、とっても感動的でした。
さて、ヒガシは本当にこれで最後の舞台になっちゃうのでしょうか。なんか違う気がしています。でも私たちにはわからない。
ただただ、皆が自由に愛し合える世界を祈り、目指し、そのために何ができるのかを、周りの多くの雑念に流されず、自分の目で見て感じ、実行していくことが大切だと思う。ルディとポール、そしてマルコのように。。
舞台で使われた楽曲のセットリストがあるそうで、↓私もこれから聞いて浸ろうと思ってます🎵。
舞台「チョコレートドーナッツ」
第1幕60分、休憩20分、第2幕60分 合計約2時間20分
原作:トラヴィス・ファイン/ジョージ・アーサー・ブルーム
(トラヴィス・ファイン監督映画『チョコレートドーナツ(原題:ANY DAY NOW)』より)
翻案・脚本・演出:宮本亞門
訳詞:及川眠子
出演:
東山紀之、岡本圭人、八十田勇一、まりゑ、波岡一喜、綿引さやか
斉藤暁、大西多摩恵、エミ・エレオノーラ、矢野デイビット、穴沢裕介
丹下開登・鎗田雄大・鈴木魁人(トリプルキャスト)
高木勇次朗、シュート・チェン、棚橋麗音、小宮山稜介
山西惇、高畑淳子
東京公演:10月8日(日)〜31日(火)PARCO劇場
大阪公演:11月3日(金・祝)~5日(日)豊中市立文化芸術センター 大ホール
熊本公演:11月10日(金)・11日(土)市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
宮城公演:11月16日(木)18:30開演 東京エレクトロンホール宮城
愛知公演:11月23日(木・祝)13:00開演 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール