「マーキュリー・ファー」配信感想 吉沢亮・北村匠海 兄弟が生きていくために あってはならない闇




2005年イギリスのフィリップ・リドリーが書いた戯曲を、2015年 白井晃さんで上演され話題となった「マーキュリー・ファー」。
名前だけは記憶していて、再演版は大空ゆうひさんが出演されるとのことで、チケットは取れなかったけど、ライブ配信でギリギリセーフで視聴しました。かなりヤバい内容っぽいから、一人夜中こそこそと観ていた…。

もうすでに配信は終了しています。直ぐには感想は書けなかった。でも何か残したいと思ったのでツラツラ書きます。きっと人それぞれ注目するポイントが違うと思うので、個人的な感想を。

簡単なあらすじ※ネタバレあり

さあ、パーティーを始めよう。
パーティーゲストと、パーティープレゼント。

この文字を見て、想像できる方、います?きっといるんでしょうね、私の知らない金と暴力でまみれた闇の世界を利用している人達なら。

出席者とパーティー遂行者はみんな男性です。ゲスト(水橋研二)は仕立ての良いスーツを着た、印象の良さそうなビジネスマン。プレゼント(山﨑光)は、エルビスプレスリーの衣装を着てお化粧をした少年。

・・・・そういう事なんだな。

パーティーをお膳立てし手助けするのが、吉沢亮・北村匠海 兄弟の仕事。ボス(加治将樹)の指示に従い、興味深そうに手伝いたい!って乱入してきた少年(小日向星一)と共に、ゲストの要望で、予定時刻より早くスタートさせる。
プレゼントの衣装とメークは、兄の恋人(宮崎秋人)が担当している。
準備に手間取り、皆焦っている。ハイになっている。仕方なく盲目で頭がいかれた姫(=母)(大空ゆうひ)も連れてきた。

何故時間を早めたか?もうこの町は明日には空爆されると情報が入った。ここを立ち去らなければならない。だから、その前にパーティーをやりたいんだと。

パーティープレゼントは、気を失いそうで顔面蒼白。パーティー遂行前に死んでしまった。ヤバい、そうだ、君。何も知らずに入って来た少年が急遽プレゼントとなる。そして始まる。そこは屠殺場と化す。

少年は何も知らないから、そりゃあ逃げ回るさ。ベッドルームから飛び出してきてみんな大騒ぎ。姫も大騒ぎ。こんな事ヤバいって、逃げるんだ!

そして出てきたピストル。ピストルを手にかける…。

ゲストは死んだ。さあどうする、この街がどうなるか、ゲストから情報を得ていたのに、これじゃわからない。僕たちは街を出るべきだ。どうやって生きていくんだ、金はどうなる?兄は、もうこんな現実を弟から忘れさせなければいけないと、そのピストルを弟に突きつける。

イヤだ、僕は生きたい。兄弟一緒に生きていきたい。愛している、死にたくない。

どうする、どうするんだ。。。お願いだ、死なないでくれ!客席はきっと息を呑んだだろう。2人は抱き合って泣いた。そしてパーティーの場所はいつも通り、証拠隠滅で全て燃やしていく。

簡単すぎてスミマセン…。そんな感じ。

映画「スラムドック$ミリオネア」を思い出した

極限状態の中、家庭不和や世の中の乱れのために貧しさを強いられた兄弟が、生きていくために大人たちに翻弄されていく。でも、何処かに微かな光を掴み、愛情や友情を信じて生き抜いていく。そんなストーリーが、インドにあったな~と。

「スラムドック$ミリオネア」は大好きな作品です。アカデミー作品賞受賞で、確かこれもイギリス人の作品だったかな。今度8月に日本で舞台化されますよね、是非観たいと思っています。

イギリスか…インドはイギリスの植民地だった。テイストは全然違う、こっちはエンターテイメントで明るい作風ですが、闇の構図でいえば同じような物。大人が子供を欲求やビジネスの対象にするマーケットが存在している。貧しさを抜け出すため、親も何も言えない。

出演者に拍手 素晴らしかった

迫真の演技、皆さん凄い!この一言に尽きます。やっぱり配信観て良かったと思いました。

主演 吉沢亮、北村匠海の2人。最近テレビをあまり観ないので、この2人がどの位人気俳優なのか知らず(笑)、何でチケット取れないの?って思ってたら、今や日本を代表する俳優さんなんですね。
演技上手いな~、そうそう映画「キングダム」で吉沢君は観たよ!北村君は私が好きだったドラマ「鈴木先生」で登場していた、一癖あるいい所の男子生徒さん。そんな記憶がツラツラと蘇ってきました。最高の兄弟愛でした👏👏。

この激しい作品をノンストップで上演する事は、体力と精神力と、ある意味チームワークとでもいうのか、運命共同体のような極限状態にハマる各々のピースが合わさらないと、観ているこちらものめり込めない。中途半端なやり方では無理だ。演者もハイにならないと、この世界に生きていけないと思う。

大空ゆうひさんは「サウンドオブミュージック」の歌を歌ってくれました。でもあの歌を歌うと失神してしまうんです…。
パパぁ~、パパぁ~という叫び声が脳裏に焼き付きます。実はこの兄弟の母親で、夫に暴力を振るわれ、気が狂ってしまいます。はぁ、、、辛い。でも生きているだけでも救いなのか。

窓のベニヤ板を外すと、暗闇から外の明かりがさしてくる舞台演出が、このパーティー会場がだんだん出来上がってくる、参加している気分になり、客席との一体感があったと思います。舞台美術は、松井るみさんでしたね。

黒いバタフライの意味は?

理解が難しかったんだけど、麻薬のようなものかな。いろんな色のバタフライを兄は持っていて、口にすると楽しくなったり、穏やかに眠れたり?このバタフライの使い方を間違えると、人間の思考が退廃的になって、集団自殺をしてしまったりするらしい。怖いよ、これ、生物兵器?

戦争状態の街が舞台なんだと、途中で気づかされます。

闇は消えるはず、きっと

確実に、確実に世界から、このような闇が消えると、私は信じています。誰も救われません。一つ一つ加担しないように心を強く生きて行かなければいけない。事実を知れば、その闇は存在できなくなると思う。

2022年の今、再演された事は何かあるのだろうか(あるのだろうね)。世の中からこのような闇がなくなり、戒めのようにまた、素晴らしいキャストが揃って演ずるなら、今度は劇場で是非体感したいと思いました。

最後にトレーラーを共有。この舞台の緊迫した空気が感じられると思います。

「マーキュリー・ファー Mercury Fur」
作:フィリップ・リドリー
演出:白井晃
出演:吉沢亮、北村匠海、加治将樹、宮崎秋人、小日向星一、山﨑光、水橋研二、大空ゆうひ

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