柴田侑宏作品の名作『凱旋門』が今、心に染みます(余韻)。
2018年望海風斗体制の雪組で、轟悠が再演した『凱旋門』。轟悠がこの作品の演技で、平成12年度の文化庁芸術祭賞演劇部門優秀賞を受賞したという作品。
あらためてじっくり観てみたけど、なんかこう、今の状況で観ると、グッと来ますね😢。
パリに集まる亡命者たちの群像劇。様々な境遇、人種も宗教も違う。共通しているのは行き場所が無い事。明日がどうなるかわからない不安な状況で、お互い身を寄せ合い、助け合い、騙したり、すれ違ったり、過ちを犯したり。
それぞれが主人公として今を生きている。それを数珠繋ぎにした、詩の様な美しい余韻の残る作品でした。とても人間臭い映画のよう。
最後は主人公ラヴィックが収容所へと行くことを決心し、持っていたパスポートを若いカップルハイメとユリアに譲って希望を託す。ああ、まるでこれは同時代の映画『カサブランカ』のラストを想像させます。
ラビックとダイモン演じるボリスの関係性がとても自然で、理事とダイモンの相性は抜群ですね。
確かにこれは柴田先生の名作だなと。そして雪組で大劇場再演は、ありだったんだなと、今更ながら思いました。なかなか柴田作品を大劇場で再演することは珍しいので。
生きていると、突然何が降りかかってくるか想像もできない事があるんだな。戦争もなく毎日が平和で、当たり前のように仕事して、観劇ができる。いや、チケ難で辛い~とか言ってるのが、ちっぽけな事だと思ったり。
小説や舞台、映画とは、こういった辛い時に光を見せてくれたりする役割があるのでしょうね。
雪ん子の群像劇がとっても良くて、大人っぽいシーンやパリの町を存分に表現していた。謝先生の演出や振付も素敵で、主題歌はもちろん名曲。丁寧にじっくり作られた、心に染みる名作だと実感します。
今の心境で、自宅にこもって、観たいと思った作品が『凱旋門』でした。