舞台「千と千尋の神隠し」感想 最高に楽しい仕掛けがいっぱい アニメリスペクトな演出に目から鱗
「ナイツ・テイル」と同じ英国演出家ジョン・ケア―ドが作り上げる、日本の名作ジブリアニメ映画「千と千尋の神隠し」の初舞台化!という事で、どんな演出になるんだろう~と大変興味がありました。
確か舞台「もののけ姫」をロンドンで上演されているニュースを聞いたとき、なんで外国人があの映画を舞台化出来るの?と不思議でした(ちょっと嫉妬?)。あの精神性を表現できるのか、理解できるのかと。
今回の千と千尋も、小学生の女の子をどう演じるのか?カオナシは?湯婆等のキャラや、時空を超えた感じとか…。舞台を観る前に公演評を見て、ああこういう感じなのか!と目から鱗👀。
私は元星組トップ娘役 妃海風ちゃんの舞台が観たかったので、風ちゃんがリンの回をチョイス!(「チョコレートドーナッツ」は休演で見れなくて😢)
上白石萌音・醍醐虎汰朗・菅原小春・橋本さとし・夏木マリでした。うふふ、個人的には神キャストッ!
楽しい舞台演出・仕掛けが盛りだくさん
着ぐるみや肉布団を着た(若干学芸会っぽい趣向でカワイイ)キャストを支える黒子たち。人形浄瑠璃の人形遣いのように、流れるような動きでパペットたちが舞台を駆け回る。
お面を付けた表現はお能の様。北斎漫画 仕掛け絵のような巨大怪物の顔が飛び出してきたり、全身で表現されたダンス、パントマイムで、カオナシはスライムのように溶けたり巨大化したりします!
エンタメさんのTweetを拝借。
【✍️Report✍️】
舞台『千と千尋の神隠し』開幕!橋本環奈・上白石萌音らを鈴木敏夫P「原作リスペクト感じた」 https://t.co/FswHHatgTE
▶回転する湯屋!ジョン・ケアードの丁寧な仕事が光る
▶#橋本環奈& #上白石萌音、鈴木Pの言葉に喜び
▶舞台写真10枚掲載#千と千尋の神隠し舞台 pic.twitter.com/vMcJS9rimz— エンタステージ (@enterstage_jp) March 3, 2022
そしてなんといっても白龍。龍が縦横無尽に駆け巡るシーンは、長崎くんちのお祭りのような、お正月の獅子舞のような感じ。千が黒子のお兄さん達に抱えられ、龍の背中にのるシーンは、超アナログで迫力満点!そう、昔懐かし「欽ちゃんの仮装大賞」を思い出した。チームワークが半端ないっ!(お稽古大変だっただろうな)
日本アジア等の伝統芸能の技も取り入れ、舞台上が日本の祭りのようなファンタジー溢れる趣き。アニメの世界観を、素朴に丁寧に忠実に、作り上げていたと思います。圧巻です👏👏。
早速海外から上演オファーがあると聞いてます(イェーイ!)。そりゃそうでしょう~、こんなに面白い舞台があるなら是非観てみたい!と、全国のアニメファンは思うと思います。
精神性が高い物語は、あらすじがどーこーではなく、感じる事が大切なんじゃないかな。この世界を感じて、何かを思うのでしょうか。
簡単なあらすじ※ネタバレあり
といいつつ、ジブリの映画はあらすじを伝えるのは難しいですね…。え、なんで?なんでそうなるの?って話が多くて、伏線もあるのか無いのか、よーわからんって映画をみた時は思ってました。
今回舞台を観て、何か暗示的な、メッセージがあるんだなと一つ一つ感じる点がありました。
10歳の少女・千尋(上白石萌音)は両親(大澄健也&妃海風)と引っ越しのため、とある田舎に移動中。レンガ造りのトンネルを見つけ、興味津々で入っていく。さびれた昔のテーマパーク跡、食べ物が沢山並ぶ屋台を見つけ、誰も居ないからと両親はパクパク食べ始めると、なんと2人とも豚に変わってしまった。そこから物語は始まる…。
千尋はハク(醍醐虎汰朗)という少年に連れられて、全国各地に住まう八百万の神様が、疲れを落としにやってくる油屋(温泉宿)に迷い込む。
両親を豚から人間に戻して連れて帰るために、千尋は双子の魔女で湯屋の主・湯婆婆(夏木マリ)に”ここで働かせて欲しい”と頼む。名前を”千”とされ、契約書にサインする。(←名前を奪われた奴隷となるんだな、ここで)
カオナシ(菅原小春)がぼーっと立っていているので、千が油屋に入れてしまう。
湯屋で働くリン(妃海風)が面倒を見る事になり、せっせと朝から晩まで働く。湯舟の掃除をし、薬草を釜爺(橋本さとし)から調達し、神様たちの入るお湯を用意する。
いろんな姿かたちの神様がお見えになるのだが、全身悪臭のドデカい神様が到来。湯婆婆は、千に対応させる。千は嫌がらず一生懸命にお湯と沢山の薬草を手配しお湯まで連れていく。神様はさぞ気持ちよかったのか、汚物の中から砂金があふれ出す!皆従業員は金に目がくらみ大騒ぎ。そして湯舟にあった緑の玉を千は見つける。
ハクは湯婆婆に名前を取られて、自分が何者なのか記憶を失くしていた。ある日、けがをした白龍を見つけ、きっとハクに違いないと、千は助け出す。双子のもう一人の銭婆(夏木マリ2役)の契約の印鑑を盗んで来いと、湯婆婆から頼まれて命からがら戻って来た白龍のハク。
そんな中、千の事が好き過ぎるカオナシが、砂金をばらまき、青蛙を飲み込み、巨大化して湯屋で大暴れしだす。千は毅然とカオナシに注意をして事を収める。
印鑑を銭婆に返すため、電車に乗って6番目の駅で降り、カオナシ、ネズミになった坊、カラスと銭婆に会いに行く。
ハクは湯婆婆に魔法使いの修行をしたいと契約を交わした、ニギハヤミコハクヌシだったと気づく。名前を見る限り古代日本の神様の一人。千が幼い頃、コハク川でおぼれそうになった時、助けてくれたのがコハクヌシだったことを思い出した。古代日本の神様は龍神。
千の愛の力で、ハクの命と名前を取り戻した!油屋に戻り、無事に両親を取り戻し、千は千尋に戻って家路につく事ができました。
そんな感じかなあ。
キャストがハマり役過ぎる
よーーくアニメを研究されているんだろうな~と思いました!違和感ゼロ。そのまんまでノーストレス。
千尋役の萌音ちゃんは、立ってるだけで小学生。歩き方、ぼやーっと不愛想な表情から、初めて働かせてもらうために着替える仕草とか、奮闘する強引さとか、アニメの千尋そっくり。大人が小学生の役をやれるって凄いと思いました!
そしてリン役の妃海風ちゃん!こちらもアニメそのまんま、男勝りのしゃかりきリンの動きが軽快。ガハハ~😆って感じが男っぽくて、お母さん役とは別人。風ちゃんの役の幅広さを感じます。
お気に入りは、カオナシ。世界的有名なダンサーである菅原小春さんが、まさに顔無しで全身黒づくめ。勿体ない贅沢な配役(笑)。動きで小春さんだってわかる瞬間もあって、すっごく面白かった。存在を消す、存在感!
湯婆婆の夏木マリが、声優としても映画出演されていますので超・納得の配役。怒った時の大巨人顔に早変わりが凄いです。釜爺の橋本さとしは、体の大きさと声がマッチしてたなー。父&兄役の大澄健也はもう安定感バッチリですよね。
子供を守る龍(神様)
千尋の小さい頃に溺れかけていた所を、何者かが(龍が)助けてくれた。子供には守護神のように龍神様が守ってくれているんですよね、きっと。こういう逸話は、他にも聞いたことがあります(私にも似た経験あり)。良くある話、なのかもしれませんね。
目に見えない八百万の神様が、いつも支えてくれている事を、大人になるにつれて忘れてしまいます。感謝の気持ちを忘れないで、たまには自然の中で神様、龍神様に心を寄せて、思い出し、祈り感謝したいなと。
昔はそういう生活のスタイルだったんでしょうね。なーんとなくですが、誰でもそんな幼い頃の思い出がきっとあって、それを呼び覚ましてくれるような物語なのかなと。だから世界中どんな人にも共感が得られる精神性の高い作品なんでしょうか。
自然の神様の存在を忘れないで、生きていきたいなぁ。
初めてのお仕事、自我の芽生え、愛
ぼやっとしていた少女が、一心不乱に働く姿、湯婆婆に立ち向かう姿、そして愛情が芽生えたハクをどんな事をしても助けたいと思う心❤。その純粋で素直で真っ直ぐな心が、観る人々の心を感動させます。
最後に湯婆婆から「お前の両親はどの豚だ?」とクイズを出され、どれもお父さんお母さんじゃないっ!と見破るシーン。騙されないぞ!両親のことは自分が一番わかる!と自信を持っている所とか、頼もしくなったな~と成長を感じさせます😀。
千尋が大人になるための通過儀礼だったのかと思う、この油屋での一連の出来事。時空を旅して、一瞬の間にこれだけの経験をした千尋が、離れ離れになった両親と再会し、一緒にトンネルを出て新しい生活を迎える、という終わりだったと思います。
一言で言えば、少女の冒険成長物語なのですが、1つ1つの癖あるキャラクタとの関わりを深堀すると、もっと何かを暗示させるメッセージが込められてるんですよね?きっと。ジブリ通の方なら、もっとたくさんポイントがありそうです。
釜爺の「愛の力はすげー」みたいなセリフがあるんですが、皆が千尋を助けるシーンもなかなか感動ポイントで、ウルウル来ます😢。情熱を持った人には、皆惹きつけられる、手を差し伸べたくなる感覚ってありますよね。人肌脱いだろかーみたいな。
私が観た回は、客席に若い女性客がたーくさんいらして。もしやジブリ映画世代の親の子供達かなあって思いました。世代を超えて、老若男女の感じ方がある舞台じゃないかなと。この舞台、すご~い!っていう感動が客席からも伝わってきました。
今年一番の話題作、今年一番の舞台かもしれないね🤔。
再演、間違えないでしょう。キャストが揃うかが鍵…。全国回ります!願わくば、橋本環奈&咲妃みゆバージョンも見たいっ!(見たかった)
舞台「千と千尋の神隠し」
原作:宮崎駿
翻案・演出:ジョン・ケアード
共同翻案:今井麻緒子
上映時間約3時間(1回休憩あり)
帝国劇場:2022年3月2日~29日
梅田芸術劇場:2022年4月13日~24日
博多座:2022年5月1日~28日
札幌文化芸術劇場:2022年6月6日~12日
御園座:2022年6月22日~7月4日
主なキャスト
千尋:橋本環奈/上白石萌音
ハク:醍醐虎汰朗/三浦宏規
カオナシ:菅原小春/辻本知彦
リン/千尋の母:咲妃みゆ/妃海風
釜爺:田口トモロヲ/橋本さとし
湯婆婆・銭婆:夏木マリ/朴璐美
兄役/千尋の父:大澄賢也
父役:吉村直
青蛙(パペット使い・声):おばたのお兄さん