「広島ジャンゴ2022」天海祐希&鈴木亮平主演 尊厳(=水)を守った母娘と馬のウェスタン物語
天海祐希を舞台で観るのはいつ以来だろう~。
蓬莱竜太の書下ろし戯曲で、出演者がかなり豪華。そりゃそうだろう、天海祐希主演!ですもの。W主演の鈴木良平は”せごどん”のイメージ。芝居上手で今回歌も上手い!なんでもできるパーフェクトなナイスガイです。
で、ですね、私はこのお話の内容にとても惹かれました。闇社会のデクラスもあったりで、細かな設定が琴線に触れる。Watch the Water💧。
簡単なあらすじ※ネタバレあり
広島のとある牡蠣工場。工場長(仲村トオル)は、社員に一体感を求め、広島カープの応援、懇親会の全員出席を暗黙の了解で強要している。最近東京から来たパートの山本さん(天海祐希)が孤立していて、懇親会にも、カープ応援にも参加してくれない、暗い主婦…。シフト係の木村(鈴木亮平)は、どうにかして山本さんを説得しようとしていた。
木村がストレス発散で一人カラオケしているときに、リクルートスーツ姿の姉(土居志央梨)が傍にいた。どうやら夢を見ているらしい。起きたら広島が西部劇の舞台に変わっていて、皆ウェスタンルックになっている!
山本さんはジャンゴ。17歳の娘ケイ(芋生悠)を連れていて、木村は馬・デカプリオという事らしい🐴。ジャンゴ(本名マリア)は、警察官の夫ショーンを殺した罪で追われ、懸賞金💰をかけられている。ケイを守るため身柄を隠して生きている。
母娘と馬は「ヒロシマ」の町にやってきた。町長(仲村トオル)は、また水の税金を上げるらしい。
町に住む夫婦(藤井隆・中村ゆり)と娘(北香那)は、皆で水を沢山使えるように、井戸を掘り、水脈を探そうという夢があった。酒場の皆からカンパを募り、せっせと井戸を掘っていたところ、町長からの妨害が😈…。
失敗させられ、カンパしてもらったお金は返せず、逆に酒場の皆から責められる立場となっていた。結果、夫婦は奴隷のように町長に働かされ、酒場では売春仕事で借金を返えすしかない。
娘達は大人達の奴隷のため狙われ、乱闘中にケイは町長の弟をピストルで撃ってしまった。そこでケイの記憶が呼び戻される。父を殺したのは母でなく、自分だったことを思い出した…。
ジャンゴは娘ケイを守るため、そして水や生活の奴隷にさせられた仲間達のため、自分の懸賞金を狙うがイイ!と町長の仲間と決闘する。ここはピストル銃撃戦!かっこいい西部劇調。馬デカプリオの応援歌(ラップ)が面白い。
実は職場のイジメに耐えられず、川に身投げをした木村の姉が、ずっと木村を守ってくれていた。姉がどうして死んだのか回想する、思いをぶちまける(このシーンが一番辛かった😢)。時空を超えた夢のお話…。
ジャンゴ達は、山奥にダムがある事を知った。水は町長の仕業で、わざと堰き止められていたのだった。ジャンゴが町長に勝ち、ダムを解放して、町は水が溢れる「ヒロシマ」に戻った。
夢が覚め、またいつもの牡蠣工場に戻る。木村は、山本さんが娘・ケイとの時間を大切にしたい気持ちに耳を傾け、懇親会は”自由参加”にすると、提案した。ささやかだけど、大きな一歩だったと思う。
(かなり端折ってますが、こんな感じ)
女性が立ち上がるんだよ!
夫の暴力、娘への性犯罪。会社では自由を奪われ、男達の”妙な一体感”に付き合わされ、奴隷のように働かされている事に虚しさを感じる。なかなかハードな事書きましたが、そういう内容です。
男はそんな深刻に考えられない。意味が解っていない。女性は尊厳を守るため、そして子供達を守るために、どれだけの我慢と犠牲を払って生きているのかを(ちょっと言い過ぎた😋)。
工場長は、ボーナスをあげるから懇親会に参加しろと、皆の幸せを一番に考えているという。普通の話?かもしれませんが、気づいている人からしたら、強制連行みたいな物で、働く人の尊厳が全く奪われている訳です。
「ヒロシマ」では水を制限する事で、町長は住民を支配していました。住民は水は無い物だと信じ切っていました。でも、水は豊富にあったのです。
山本さん(マリア)は、ずっと娘ケイのために生きていると思っていた。でも本当は、ケイに救われている、ケイがいるから生きているんだと気づきます。尊厳を守る行動を起こしたのは、ケイの方でした。
何がキッカケで目が覚めるかは分かりませんが、この先ハッと気づいたり、違和感を感じたり、尊厳を奪われているのではないかと直感したら、その時がチャンスだと思います!
自由参加で、耳傾けて
で、周りの人は何が出来るのか?
木村さんの答えは、話を聞く、耳を傾ける、事でした。
亡くなったお姉さんの告白を聞いたとき、誰かもっと話を聞いてあげられなかったのかと、胸が苦しくなりました。気づかないうちに人が苦しんでいるかもしれないって。
懇親会の参加は、自由意志となりました。全ては自由意志でないといけないと思います。
天海祐希の母性、愛情を物凄く感じたお芝居でした。最後の町長にバーン!あのシーンはカッコよかったですね😍。ウェスタンルックは、大柄なあまみんにやっぱりお似合い。仲村トオルも迫力ありますね~。皆さんの熱のぶつかり合いが心地よい舞台でした。
ラストは水が会場いっぱいに溢れるような照明に、感動しました。
水は沢山ある。でも私達の生活でも、水の自由化とか、ヤバい話が出ているじゃないですか。水は命の源。みんなの水が、支配される事にならないように、Watch the Water💧。
「広島ジャンゴ2022」
2022/4/5(火)~4/30(土) シアターコクーン
2022/5/6(金)~5/15(日) 森ノ宮ピロティホール
作・演出:蓬莱竜太
出演:天海祐希、鈴木亮平
野村周平、中村ゆり、土居志央梨、芋生 悠、北 香那、宮下今日子、池津祥子、藤井 隆、仲村トオル 他