「お勢、断行」江戸川乱歩 ドロドロした先生達(男)と強かな女達のサスペンス!
世田谷パブリックシアター「お勢、断行」。前回中止になり残念って思っていた所、再開という事で観て参りました!東京は終了しましたが、この後全国を回るそうです。
安定の大空ゆうひさん出演という事でチョイスした訳ですが。江戸川乱歩原作、大正末期、ドロドロとした人間模様が観られるのかなと思ってのぞみました。
後妻役のゆうひさん、ほぼ主役級でしたよ。小姑の池谷のぶえさんとの掛け合い、最高でした👍。
『お勢、断行』本日5/22(日)は13時開演です。
当日券電話予約は11時まで承ります。
窓口販売は12時より #世田谷パブリックシアター 劇場入口の当日券受付にて販売いたします。当日券の詳細は下記をご確認ください。https://t.co/3h9dHNtJ48…#お勢断行 pic.twitter.com/ybEZoYOxuX
— 世田谷パブリックシアター『お勢、断行』 (@osei_sept_2020) May 22, 2022
タイトルのお勢(せい)さんが、主演の倉科カナさん。可愛い。役どころとしては、作家先生の弟子(女流作家)で、本当に才能あるの?自分で書いてるの?って疑われている。きっと愛人なんでしょうね。
お勢さんが断行するんですよ!ドロドロした金と憎しみ、復讐の伏魔殿で。このシーンが見所ポイント。はっと息を呑む名シーンだと思います!タ、タ、タ、タ。バン、バン、バ~ン!
簡単なあらすじ※ネタバレあり
資産家の松成千代吉の屋敷に、前妻の娘(福本莉子)、後妻(大空ゆうひ)、女中(江口のりこ)。小姑(池谷のぶえ)がちょくちょく兄からお小遣いを貰いに屋敷に訪れる。この小姑の旦那が作家先生で、弟子のお勢(倉科カナ)が色々あってこの屋敷に居候させてもらっている。
この家を仕切る後妻、子供が出来ない身体だと診断されてから、千代吉から冷たく扱われてきた。千代吉からDVの被害にあっている事は一応隠してはいるが、寄付を依頼に来た代議士先生(梶原善)も、話合い中に千代吉から灰皿?を投げられ流血…。
気性の荒い千代吉を懲らしめたい、金が欲しい。後妻と代議士の気持ちが一致した。そこで精神病院の医院長先生(正名僕蔵)と女中に協力を仰ぎ、千代吉を社会的に抹消し、お金の使い道を後妻に任せてもらうよう計画する。
女中は電灯工事夫(堀井新太)に頼んで、屋敷の電気を切って停電にしてもらい、元々真っ暗闇が苦手で叫ぶ千代吉を、精神がオカシイという事で病院送りにしてしまう。
この精神病院、何かがおかしいと探偵(粗谷吉洋)が嗅ぎまわっている…。
代議士と医院長は、後妻に寄付金と今回の企画代として多額のお金を要求する。あれ、そんな事になるなんて…、後妻は困惑。
父が好きな娘と、この屋敷の人々をじーっと観察しているお勢は、千代吉を病院から取り戻そうと考える。
ちょっとしたボタンの掛け違いで、工事夫は今回の事件の実行犯として消されるかもしれないと、訪ねてきた探偵を間違えて殺害してしまう。女中は死体を屋敷裏にある井戸に隠そうと忠告する。上手く隠し切れず死体の転がる屋敷庭。
そこからは誰が何を見たのか、何を隠し嘘をつくのか、保身や世間体、それぞれの思惑が交錯しドロドロ状態の中、お勢は断行する。屋敷2階からタ、タ、タ、タとまさに階段降り(落ちじゃなく)、代議士をバーン、医院長をバーン、そして逃げる後妻をバーン🔫。お勢はやりたい事を成し遂げた。
お勢は精神病院の看護婦(千葉雅子)から聞く。後妻が子供を産めない身体だと伝えて欲しいと、言ってきた身内がいたと。は?え?それは前妻の間に生まれた娘だったのではないかと。(最大の仕打ちだ)
女は好機を狙っている…誰が悪いのよ?
最後は背筋が凍りましたよ。娘!一番の策士!悪魔…。
純粋無垢な顔して、皆が嫌っている千代吉の最大の味方である娘は、後妻との間に子供を作って欲しくなかった(このあたりの具体的な理由は想像に任せる感じだったかな)であろうため、看護婦に依頼する。
後妻はそれがキッカケに、辛い思いをしながら屋敷を仕切り、小姑に圧力かけられ、悪い人達の策略に加担してしまい、哀れな最期に。後妻を利用した代議士、何も悪びれもしなく人を病院送りとする医者。金に群がる猛獣達の百戦錬磨。これが江戸川乱歩の世界なのか。大変面白かったです。
お勢さんの存在感が、このドロドロした屋敷に咲くドクダミの花とでも言いましょうか。何を考えているのか分からないだけど、いい意味で空気を搔き回す存在。
先生達(男)の無慈悲な策略
まあ、全ては金、金、金ですな‥。
人の金を奪う為の策には長けている。嘘をつき隠し通し、辻褄を合わせ、隠ぺい工作は組織的。なんか、これって実話にもありそーな痛快ささえ感じる、見事な連携プレーでした。悪びれる気持ちは一切なく、それでも人間かぁ!って思うほど。情が無いのだなあ。
一度ついた嘘は、一生付き通さなければならない。しかも”先生”というい肩書のついた方々は、世間体が大事。それが出来て、初めて”先生”と呼ばれる証みたいな感じも、最近してきました。
後妻が千代吉の晩年を憂いて、世間体を考えて病という事でフェードアウトさせるのも優しさ、みたいな事を言っていた場面がありました。
大屋敷とサスペンス劇場的な映像のコラボ
屋敷の応接間や控室、お勢のお部屋など、きっと昔のお屋敷は沢山部屋があったんだろうなー。そのセット転換がお洒落で心地よい。随所に現れる出演者のサスペンス劇場15秒CMのような映像が効果的。臨場感が高まります。そして2階と1階を行き来する人達、最後のお勢断行の階段降り。照明がドラマチックで、痛快さが良い!
大変面白かったし、なんかドロドロしてて、嫌~な感情にもなったり、最後は背筋が凍ったり(くちアングリ)。
まさにサスペンス劇場でございます!ノンストップ2時間。お見逃しなく。
「お勢、断行」上演時間2時間
原案:江戸川乱歩
作・演出:倉持 裕
出演者:倉科カナ 福本莉子 江口のりこ 池谷のぶえ 堀井新太 粕谷吉洋 千葉雅子 大空ゆうひ 正名僕蔵 梶原 善(5/28~代役:阿岐之将一)
世田谷パブリックシアター:2022/05/11(水) ~05/24(火)
兵庫、愛知、長野、福岡、島根を回ります。