和希そら『双曲線上のカルテ』感想 ハンカチ必須(涙)命の使い道 優しい嘘 医師と看護婦の最後の恋




日本青年館で上演中の和希そら主演『双曲線上のカルテ』を観て参りました🙋。そら主演の生の舞台は久しぶりだと思う。ライブ配信で見て、ようやく舞台で観れると青年館が待ち遠しかった。嬉しい!

2012年雪組 早霧せいな主演で上演された、渡辺淳一「無影燈」原作、イタリア・ナポリの病院を舞台にした医療ドラマミュージカル。当時は医療ドラマが沢山テレビであった気がする。今もそうかな?専科の夏美よう、五峰亜季、そして組長のにわさん、あすが再登板です。

宝塚の医療ドラマ やっぱり涙そそられます

病院って私達にとっては日常だけど、宝塚にとっては非日常。珍しいシチュエーションです。

男役の白衣&メガネって、超セクシーなんですけどぉ🤓。診察、手術、レントゲンチェックする姿までもが、タカラジェンヌが演じるとエレガントで美しい✨。流れるような動作。そして白衣の天使達は、もれなく可愛くて✨。クリクリ頭の婦長さん(愛すみれ)もなかなかの美声。

涙をぬぐうハンカチをお忘れなく😢。病と闘う様々な境遇の人が出てきたり、病院経営や医療方針の違いの話や、個性の違う女性達の愛の形があったりで、自分は誰に共感するのだろうか、案外身近なテーマだと思うので、それも楽しみのポイントだと思う。

和希そら演じるフェルナンド先生は、自分の病と死を覚悟し、研究のため自ら実験台となり、モルヒネを打ちながら治験データを内緒で取り続けている。たまに激痛が腰に走るシーンは強烈で😱、素晴らしい演技力。ドラマでもそうだったなと思い出す。

患者の気持ちが良く分かる境遇なだけに、フェルナンドの医療は、患者の身体だけでなく尊厳を守る事も考える。常識とは違う方法を取る事もあり、ランベルト先生達との衝突もあるが、あくまでも公平な見方で、患者各々を区別しているようだ。

裏の顔は、死の恐怖に怯えながら酒と女で気を紛らす日々。そんな時に現れた癒しのエンジェル、新人看護婦のモニカ・華純沙那に恋をする。彼女は疑う事を知らない、何も持っていない、先生を純粋に信じる看護婦だった。

ちょっと彼女に嫉妬心を覚えたくらい😅堂々として可愛い素敵なモニカでした!拍手👏👏!
白いベレー帽姿で、モコモコの手袋片方を先生に渡す所、もぉぉぉ可愛すぎるッ😆!なんて可愛いLOVE

先生?先生!って、何度も”先生”って呼ぶんだけど、それが萌えだよね…。

桜路 薫 演じる胃がん末期 ピザ職人の死で涙・涙😭。そっから徐々にフェルナンド先生の真実が明るみとなり、ラストのひまわりの花畑🌻が映った瞬間、嗚咽状態😭😭😭宝塚版もその展開か~よかったよぉ(オイオイ泣く)って感じでした。

人は生まれ変わる。身体は変われど魂は生き続け、何かに変わって繋がって行くように思う。『双曲線上のカルテ』は、そんな希望や、自分の命の使い道、生き甲斐から死に甲斐まで主体性をしっかり持てたらいいなと、思わせてくれる物語だと思う。

簡単なあらすじ・コメント※ネタバレあり

イタリア・ナポリ セルジオ・マルチーノ(夏美よう)院長の個人病院。バチカンで働いていた外科医フェルナンド(和希そら)が、何故ナポリの個人病院に来る事になったのか?恩師のクレメンテ教授(奏乃はると)だけが知っている。

病院にはフェルナンドが許可したマフィア(反社会勢力)の患者や、怪我したチンピラ、急性アルコール中毒の若者等が運ばれ、当直のランベルト(縣千)やフェルナンド、新人の看護婦モニカ、サンドラ(千早真央)達が対応する。

病院経営者としては、例えマフィアであっても大金持ちの入院は大歓迎。しかし、医師会?選挙に立候補を決めた院長は、いよいよ身辺整理?臭い物に蓋しないといけない状況。

うーん、ドラマでも現実でもありがちな風景🤔。誰のための医療だよ…。はっちさん、見た目から行動まで、なんかイタリアのオジサンぽい。あんな飄々としたキャラクターだからこそ医院長向きなんだな。

そして院長秘書で娘でもあるクラリーチェ(野々花ひまり)を、ランベルト先生と結婚して跡を継いでもらったらどうかと(フェルナンド先生は問題児だから選挙に響きます)、、そんな話も考えている。

しかし、クラリーチェはフェルナンド先生を愛しており、まあ隠れて付き合っているのかな。大人の恋って感じだけど、新人モニカの存在が怪しいと目を光らせる!やっぱり女の勘は当たるよね~。2人は言い合いになって喧嘩別れ。クラリーチェお嬢様は気位高いから😉。。

そこでクラリーチェはゴミ箱の中から見慣れない薬を見つける。はて、なんだろう?かと。

ピザ職人チェーザレさん 嘘の手術

末期胃がんのピザ職人チェーザレさん(桜路 薫)が入院をしている。がんという真実を奥さんボーナ(杏野このみ)共に受け止められないだろうと、胃潰瘍だとフェルナンドは嘘を付いてきた。

チェーザレの希望で胃潰瘍手術を約束。つまり、形だけの嘘の手術を行う。希望を持ってもらうための優しい嘘で、フェルナンドはチェーザレが納得する最期を整えてあげたいと言う。

その後、チェーザレさんが看護婦に抱き付いて困っているという報告が上がってきた。フェルナンドの見立てでは、死に近づいた者は本能的な行動に出やすくなるという。拒絶せず優しくしてあげて欲しいと…。
ある晩、モニカはチェーザレに抱き付かれ、フェルナンドの言葉を思い出すのだった。

チェーザレさんは徐々に真実に気付いたのだろう。そして遺書を残して旅立って行った。
がんだったと後から告知されたボーナさんは、嘘を付かれたと愕然とするが、後日、やはりこれで良かったのだと、フェルナンド先生に感謝するのだった。

この出来事、フェルナンド先生がとった、患者と患者の家族の事を考えた設定、優しい嘘、とっさの演技。
一緒に執刀したランベルト先生やモニカ、院長やクラリーチェも色々考えるキッカケになるんじゃないかな。

小児がん子供達のチャリティ

病院中庭で歌手のアマーリア(白綺 華)のコンサートが行われた。子供達と病院スタッフで賑やかなひと時。特にランベルト先生はアマーリアのファンで、当直を変わってもらってやってきた😁。

アマーリアのマネージャーさん(風雅 奏)がさー、あれ、初演ランベルト役 夢乃聖夏の『シャルウィーダンス』で出てくるキャラクターソックリだったんだけど、どうなの??超気になってロックオンでした。超面白い!

飲み物は”アニータの店”のアニータ(希良々うみ)がボランティアで手配してくれた。院長の愛人アニータは、初めて奥様ロザンナ(五峰亜季)に出会う。

いい人じゃないか…希良々うみのアニータが良かったな~😃。独りで店を切盛りし、息子を育てる事は大変。おカネの無心も考えるお母さん感も出ていた。

アニータには一人息子アントニーオ(咲城けい)がいる。本当に良い子で、母親の教育が素晴らしいのだわっ。愛情深いっていうのか、自慢の息子って良ーくわかる。
実はアントニーオはセルジオ院長の子供で、クラリーチェとは異母兄妹という事になる。その事実を、フェルナンドはアニータの店で知る事になる。

クラリーチェ倒れる

クラリーチェがフェルナンドの部屋で見つけた薬、モニカもフェルナンドの部屋で見つけたレントゲン写真。これらをランベルトに見せると。。。フェルナンドの秘密が分かってきた。

咄嗟の判断で、ランベルトとクラリーチェは、モニカに嘘をつく(先生は大丈夫だよって)。
ここがねぇ、優しい嘘なんだよね。昔のランベルト先生だったら、嘘つけないと思う。今は人の気持ちをわかる医者に成長したと思うな。

レントゲン技師のジョルダーノ(久城あす)登場。いやぁ、マジカッコいい!医療ドラマに出てきそうなレントゲン技師だよねぇ。ある患者を研究のためずっと撮り続けていると。それは、フェルナンド先生自身だったんだ。

フェルナンドが!って半狂乱になったクラリーチェは、気を失う…。なんと、彼女自身もまた難しい名前の貧血症で、骨髄移植が必要だと診断されてしまう。腕のアザが治りにくいのはそのせいだったのか。

両親の骨髄は合わず、そこで異母兄妹のアントニーオを紹介する。彼を子供だと認知する(肉親である)条件で移植が叶うことになる(選挙が…)。
愛人、腹違いの子。突然の話だがロザンナはアントニーオ、皆に感謝する。

助かったクラリーチェ。しかし彼女は病床の中、フェルナンド先生が死んじゃう…と泣き叫ぶ。フェルナンドの真実を院長に伝える。彼は多発性骨髄腫で、もう治らない身体だった。

フェルナンドの故郷 湖のほとり

フェルナンドはモニカを故郷へ一緒に行かないかと誘う。スイス国境近くの湖のほとり。冬の寒い時期。母親に紹介する。なんて幸せな2人だけの時。夏になったらひまわりが一斉に咲くんだと。ひまわりが似合うモニカ。

最後の最後までモニカには何も告げず、フェルナンドは湖に身を投げた。

湖のダンスシーンが本当にヒンヤリ、そらが水に浮いているように見えた。あれ凄いな~😃。素足で踊るダンスナンバーです。

翌日、母親から病院に一足先に戻ったモニカに電話が来る。フェルナンドの自死、そして病気の真実を院長やランベルト達から聞かされ、自分だけ知らされていなかった事に呆然とする…。

5年後、モニカは湖のほとりにある終末医療の施設で働いていた。見学に来たまだ独身のクラリーチェ。チンピラの彼らもスタッフとして働いている。

湖のほとりにはひまわり畑が!そして小さな男の子がやってきた(涙)。

ああ、そうなんだよ。モニカはフェルナンドとの子供を身ごもっていたのよ😭。

ヤバい、ここで涙腺崩壊です💧

モニカは先生が見込んだだけある、本当に強い女性だ。先生の生まれ変わりがこの息子なんだろうな。

命ってなんだろうね。
魂は身体を変え生まれ変わるのか、人の心に寄り添って生き続けるのか。

クラリーチェが助かったのも、クレメンテ先生がフェルナンドの臨床データを参考にしてくれたからというし。あの過酷な状況の中で一生懸命生きた結果が、クラリーチェの命を救い、モニカとの可愛い息子の命を生み出したんだーと。

ああ、思いっきりネタバレしちゃいました。。でも一番感動的なのがラストシーンなので。ここは何度観ても美しく涙溢れる場面です。

登場人物たち

2人の医師 フェルナンドとランベルト

自分の命の使い道を自分で決めると、決断しているフェルナンド先生・和希そらは、誰に対しても熱い!

思いっきり怒鳴って怒りまくるし、顔をしかめっ面にして大きな涙を流す。優しさを求めたいときは、思いっきり抱きしめる。ちょっと大げさじゃないかなって思うほど、常に150%の集中力で自分の命の使い道を考えて生きている。

病院内のちょっとホンワカしている世界の中で、少し浮く位の真剣さが素敵過ぎて😍。イタリアの上質なスーツ、煙草を常に吸っている姿、もちろん白衣もメガネも、なんならモルヒネ打つ慣れた手つきも…

何をやってもカッコいい、フェルナンド先生😍。

普通の医師では気付かない、患者への尊厳、死へ導く伴走の気持ちがあり、嘘の手術をしたり、資金繰りを上手く融通したりもする(違法だが)。

対照的なのは、杓子定規で、身体を治す事のみが医者の本業!(正しいのだけど)と思っているランベルト先生・縣千。2人は方針が違い過ぎて、たまにバトルすることもある。

ちょっとほっそりした縣のランベルト先生は、大学病院に本当に居そうな真面目な良い先生😃。わかる~って感じです。

院長夫人ロザンナさんの診察シーンが、盛り上がりましたね!

年齢ですね、腹巻いいですよ。

おいおい、女性に絶対、絶対言ってはいけないワードですっ🙅!!世の男性陣、お気を付けください。女性は一生覚えてますから~😅。

そんなランベルト先生が、フェルナンド先生の真実を知った時に頑張った!やさしい嘘をつく側になった。あの瞬間の診察室は、ちょっと感動的でした。

患者、そして患者の家族の気持ちを自分事として思うキッカケになったんじゃないかなと。そう思うと、フェルナンド先生は、ランベルトの医療にも温かい命を吹き込んだ事になるのかな。

2人の女 モニカとクラリーチェ

ふー、今の私にとっては、クラリーチェの気持ちの方が共感できるなぁ。

院長の娘クラリーチェ・野々花ひまり。お名前がひまり(ひまわり?)なんだけどね~。地位も名誉も金も何もかも持っている女性かな。彼女なりに先生に愛されたいと一生懸命なのも分かる。

そんな彼女が嫉妬する、新人看護婦モニカ・華純沙那
わ、わ、私も嫉妬したよ(笑)。彼女は素直に騙されてくれた。まだ若い、真っ直ぐで優秀な看護婦。

この状況がピタリとハマりましたね!可愛いだけじゃない、しっかり24時間患者に向き合う仕事をする、責任ある立場でもあるモニカ。幼さとナースとしてのプロ意識が共存する、先生!と常に右隣に立つ姿

色々な初めての事に笑顔で喜ぶモニカ。どれもこれも、可愛かった~。遠い昔の自分であれば、モニカにとっても共感するだろうな。

同僚のナース サンドラ・千早真央の、ナチュラルな、ちょっとミーハーっぽいナースさんもイイ感じでしたね。ドクターゲットだね~!みたいなアドリブ。いや、本当にそうよ!GETだわよね😊。

笑顔満点の和希そら フィナーレ!新しい雪組の空気

お芝居本編とは打って変わって、笑顔満点のフェルナンド先生!!来た来た~!って感じでしょうね、客席の皆さまも😆。イタリアのちょっと大人のバーの気分なアダルティーフィナーレ。

両隣には、そらと同じぐらいキレッキレにスマートに踊る縣千。そして満面の笑顔で楽しそう~ないい人・咲城けいと、代役お疲れ様(ちょっと見たかった)眞ノ宮るい。
え、凄い贅沢じゃない?この状況。ああ、新しい雪組の雰囲気、空気だなーと思いました。これからも楽しみよねっ!

回数足りない…もっと観たかったのですが、あっという間にデュエットダンス!

またもや嫉妬しちゃう😅、先生&モニカの初々しくもプロ級のデュエットダンスで。リフトもこなす!素晴らしい!モニカちゃんは、お芝居、歌、ダンス、そのかわいらしさ含め、すべて揃った娘役さんだよ!

これはこれは、将来どうなるか!ワクワク・ドキドキ胸騒ぎ状態ですね😍。

個人的に思い出深い作品になった

という事で。。

医療ヒューマンドラマというと、私もなんだか心に思う事が沢山あって、ふつふつと湧き上がり過ぎて纏まらない状況になり、なかなか記事に書けなかったのが正直な所。

実はこの流れがとても運命的だと思った個人的な話。

1年前の9月は宙組『HiGH&LOW 前日譚』で、カナ(潤花)が余命3カ月だと宣告されてからの物語だった。
丁度そのタイミングで私の友達が、がんになってしまったと連絡を貰った。何万人に一人とか言ってたかな。

全く信じられないし、医者から脅されてるんじゃないかと思ったし。治療しながら生活できると、たまに連絡もくれていたから、私も元気になるまで会いたくないと思っていた。

そして約1年経って、急に容体悪化。本人も家族も驚いたみたいだ。
先週の今日、お母さんから電話を貰った。亡くなったと。

チェーザレさんが言っていた、2つの質問を天国で聞かれて、どう答えたのかな。
お母さんが言うには、やりたいことはすべてやった、後悔は無いと生前話していたと聞いてホッとした。私からみても、何でも出来る忙しすぎる彼女だったから。まるで宮沢賢治のよう(『銀河鉄道の父』)。

ランベルト先生のように、私は彼女の残した何かを、繋いでいく物があるのかと、今考えている。彼女が残した小さな店があって、何か私が出来るのか、一先ず片付けに参加してくる予定です。

湿っぽくなってしまった。でもなんか吐き出したかったので、書いておいた。

そらが言っていたように、いつかまた、なんかのタイミングで双曲線を思い出す事があるだろうなと。その時は誰の立場で、どの気持ちに寄り添えるのか、って思ったりした。

そして、これだけのシリアスでヒューマンなドラマ作品を好演できる和希そら。宝塚らしさもしっかり忘れず、美しくカッコよく、心に響かせて魅せてくれる、今の宝塚の中でも貴重な存在だなと思いました😃。

千秋楽19日まで、カンパニー皆で頑張ってください!

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