「ラグタイム」感想 アメリカの歴史叙情詩ミュージカル 白人 黒人 移民ユダヤ人の生きた証




60周年を迎えた日生劇場。ミュージカル「ラグタイム」を観劇して参りました🙋。

ナタリーさんより。

このポスターが何を物語っているのか。様々な人種、白い人、黒い人、グレーの人。そして星条旗。彼らの肖像画がポスターになったようで、キャスティングも素敵だなと思いました。

ラグタイムを観て

出演者は大変豪華で、主役級の演者たちが集っている。

黒人のピアニストに井上芳雄、白人家庭の主婦に安蘭けい移民ユダヤ人に石丸幹二。この3人が人種の代表者の様に登場し、ラグタイムが流行した時代のアメリカで、全く接点が無さそうなのに、運命の糸が絡み合い大きな一つの”正義の行使”に関わって行く。

はじめは淡々と各々の生活を描いた抒情詩のようなミュージカルかなと思いながらも、登場人物の設定が、絶対何か衝突が起こりそうな危険をはらんでいる状況だとは直ぐに分かる🤔。

どうなっちゃうんだろう。。とドキドキしながら観ていた。

ラストは井上君が鬼になる!白人から受けた侮辱に対し、人として平等にある正義を諦めずに行動で見せていく。人種を超えて若者達を惹きつけ、一触即発状態まで突き進む…。

テロリスト化してしまった彼らが、この状況をどうやって乗り切るのか、とても興味深かった。白熱したシーン。緊張感高まる状況において、大切にしたいモノは何なのか、男達が瞬時に判断し行動するんだと思います。
リアリティある現場を目撃したようで、最近興奮したドラマ「VIVANT」かぁ😄!って位、感動した😃。

また小さな子供達が出てくるところも見所。白人の息子、黒人の赤ちゃん、ユダヤ人の娘。

個人的には、安蘭けい演じる主婦が
全てを受け入れる、どんなに弱くても、どんなに強くても みたいな事を言っていたのがとても印象的でした。

女性として、この大きな大きな愛の気持ちが、結果的には全てを救うのだと、一つの答えかなと思いました。とうこさんのソロ曲が涙を誘います、熱唱です😃!

もう一人の主人公、石丸幹二演じるユダヤ人は、夢見てアメリカに来たが、全然豊かになれない仕組みに嘆く。娘を守らなければ売られてしまう危険性のある国、アメリカ😱
アナーキストのユダヤ人活動家に一定の理解を示すも、それも違う。ユダヤ人の持つアーティスト気質を忘れず、最後は映画監督として大化け(出世)します。リアルなユダヤ人らしい展開です。

娘のために一生懸命働く父。アメリカで”本物の心”を持つ女性を見つけた、それがマザー安蘭けい。

この出会いがとても美しいんですよね✨。貧しくて誰からも声を掛けられない彼に、マザーは丁寧にごあいさつをする。マザーの美しい心は、何処までも汚されない強さも持っていた。本当に素敵な女性です。

公式動画より。

ラグタイムって何?

そもそも…ラグタイムとは。Wikipediaより。

ラグタイム (ragtime) は、19世紀末から20世紀初頭(記載ある楽譜の出版年とされる1897年ごろから第一次大戦ごろまで)[1]にかけて、アメリカを中心として流行した、黒人音楽に強い影響を受けた音楽ジャンルである。リズムのシンコペーション(強調)が大きな特徴である。

音楽のジャンルなんですね。有名な映画「スティング」のジ・エンターテイナーがそうだそうです。明るく皆で朗らかな気分になれる音楽で、昔、楽譜買って弾いてた時があるな~下手くそなりに。

第1次世界大戦が始まると廃れていくそうですが、その後に流行するジャズとは一線を画す、クラシック音楽と同様に即興性はほとんど無く、きちんと作曲されており、演奏も楽譜どおり正確に行われることが多いそうです。

このミュージカルのタイトルが「ラグタイム」であるという事と、何か関係があるんでしょうかね。

簡単なあらすじ※ネタバレ少しあり

公式HPより抜粋させていただきます。

ユダヤ人のターテ(石丸幹二)は、娘の未来のために移民となり、遠くラトビアからニューヨークにやってきた。

黒人のコールハウス・ウォーカー・Jr.(井上芳雄)は才能あふれるピアニスト。恋人のサラ(遥海)は彼に愛想をつかし、二人の間に生まれた赤ん坊を、ある家の庭に置き去りにしてしまう。赤ん坊が置き去りにされたのは、裕福な白人家庭の母親 マザー(安蘭けい)の家だった。

偏見を持たず、正義感にあふれるマザーは、夫のファーザー(川口竜也)が長く家を不在にしている中、赤ん坊を拾い上げ家に迎え入れる。

マザーの弟であるヤンガーブラザー(東 啓介)は生きがいをもとめる不器用な若者。アメリカ中の注目の的である美人女優のイヴリン・ネズビット(綺咲愛里)に愛の告白をするが、イヴリンは公衆の面前で彼にキスをしておきながら、その後すぐに軽く拒絶する。

ターテと娘はニューヨークに着いてから貧しい生活が続いていた。やがて同胞の女性アナーキストであるエマ・ゴールドマン(土井ケイト)、奇術師にして“脱出王”の名をとどろかせていた、ハリー・フーディーニ(舘形比呂一)と縁を結ぶことになる。

サラの愛を取り戻すため、マザーの家に身を寄せる彼女の元に通い詰めるコールハウスは、今や“ラグタイム”を奏でるピアニストとして世間で注目され始めていた。ヘンリー・フォード(畠中 洋)が世に送り出したT型フォードを買うことができるくらいまで稼げるようになったが、黒人を蔑視する白人たちに車を破壊されてしまう。そんな中、教育者、作家として啓蒙活動を行う、ブッカー・T・ワシントン(EXILE NESMITH)のように、社会に影響を与える黒人も現れ始めていた。

自らの正義と、生まれたばかりの息子の未来を守るため、差別に立ち向かおうとするコールハウスではあったが・・・。

マザーの悩みは、もしかすると現代主婦の悩みにも少し通じるのかな。ファザーの言う事を聞かなければならない。裕福で、わけわからない(笑)北極探検に長期で出かけて行ったり、息子に世の理不尽さを説明する事が出来なかったり。

そんな中、黒人の赤ちゃん=コールハウスとサラの赤ちゃんを見つけ、マザーは自分の意志で育てていきます。白人家庭に黒人が出入りするようになり、周りの目も気になる所。でも彼女は気にしない。

T型フォードの車をハチャメチャに壊されるコールハウス。正しい裁判をと訴えるが人種差別の洗礼を受ける。妻のサラが混乱の最中で殺されてしまう。これが引き金になったのでしょう、仲間と共に武器を持って死に物狂いで犯人を捜し始める。治安は悪くなり、益々白人と黒人の間に溝ができる。

彼らが立てこもった花火工場に交渉に入ったのがファザー。反対していた黒人の赤ちゃんを無事に保護している事を引き合いに、コールハウスと交渉をする。ここでマザーの愛が役に立ったわけだ。

黒人の教育者ブッカー・T・ワシントンも説得に行きます。素晴らしい人格者です。

結果は…という感じなのですが、結果が全てではないなと。
どうしてこんな行動に出たのか、コールハウスが黒人の仲間達に、正義を行使する事を諦めさせたくなかった、というような事を伝えます😢。自分のエゴだけじゃないんだよね。リーダーとしての器。闇落ちしてしまったけど。

残った人達は、皆ひとつになって幸せな人生を歩んでいくんだという、明るい希望に涙😢です。

脱出王とブランコ乗りのイヴリンが、なんともちょっと良く分からなかったんだけど(笑)、作られた国・アメリカのエンターテイメント的役割なのかな。

ウィ~💗!!って、いつも叫んでいるあーちゃん 綺咲愛里が、なんともピッタリのお役でした😊。
お色気ある可愛い商売女?って感じで。愛人殺しから一気に人気が出たブランコ乗り。これがアメリカって感じでした。退団後、初めて私は観劇したかな、あーちゃん、やっぱり可愛いっ😍!

世界は新しい時代を迎えるー

ポスターにあるサブタイトル「世界は新しい時代を迎える」。

この若干難しいアメリカの歴史、社会派ミュージカルを観に来る人は居るのかな…とちょっと思ったけど、観て見れば、3年前の自分と今の自分は確実に感じ方が違うと思い、とっても心に沁み、ジワジワ来る感じです。

人種、差別など、テーマにした作品やニュースが沢山あると思う。でも、マイノリティ意識を利用して、思わぬ方向に人々を扇動する輩がいる事も分かってきた。

差別のプロトタイプな刷り込みでは無くて、彼らが何をしてきたのか、どういう歴史だったのか、そして何を大切にしているのか、その人の真実はどうなのか…心から共感できる真摯な作品だった。そういう作品を、最近は引き寄せるようになってきた気がするなぁ。

人種と格差を飲みこみラグタイム

このラグタイムの時代の物語を、今の私達が知る意味があるのかもしれない。そして、その先の新しい時代をどう作るのか、という事なのでしょうか。

1度で全部は理解できないかもしれないけど、何かを掴んだような気がする。そしてこのミュージカルを作り上げた日本がスゴイよね。すぐにスタンディングオベーション👏👏良い経験でした!

ミュージカル『ラグタイム

日生劇場:2023年9月9日(土)~9月30日(土)
梅田芸術劇場メインホール:2023年10月5日(木)~10月8日(日)
愛知県芸術劇場:2023年10月14日(土)~10月15(日)
第1幕90分、休憩20分、第2幕70分 合計約3時間

脚本:テレンス・マクナリー
音楽:スティーヴン・フラハティ
歌詞:リン・アレンズ
翻訳:小田島恒志
訳詞:竜 真知子
演出:藤田俊太郎

出演:石丸幹二 井上芳雄 安蘭けい 遥海 川口竜也 東 啓介 土井ケイト 綺咲愛里 舘形比呂一 畠中 洋 EXILE NESMITH 他

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