『ELPIDIO(エルピディイオ)』感想1 鳳月杏&彩みちる 目覚めよ 自分を欺くなかれ 例えカムフラージュであっても




いい話だったな~✨。
社会派で、笑いあり、食あり、どんでん返しありのラブロマンス・
ミュージカル。

横浜KAATに行ってまいりました!月組 2番手鳳月杏の主演作、謝先生オリジナルのスペイン物『エルピディイオ』。
真っ赤な劇場に、真っ赤なスペインの男女がクラシックなスペインの踊りや、コンテンポラリーなダンス、杖、クラップ、足音、そして扇子がバサッと開く音(フィナーレ素敵ですよっ)。もちろんギターの生音も、色々な音が、小気味よく劇場に響き渡ります。

月組お馴染みの芸達者と、若手もどんどん成長して、重厚且つ軽快な、エネルギッシュなミュージカルでした。前半、スペイン情勢についての説明台詞は、結構難しい内容ばかりだったと思う。詳細にスペインに存在する地域の特徴や、国ではなく個人主義である事、家族を一番に思う民族だとか、教えてくれます。このあたり、日本や他のヨーロッパの国とは違うんでしょうね。

あらすじと個人的見どころを。

簡単なあらすじ※ネタバレあり

マドリードにあるマルコス(千海華蘭)のレストラン・カミーノに、吟遊詩人として働いているロレンシオ(鳳月 杏)。そこにはカタルーニャ、バスク、バレンシア、色々なスペインの地域出身の老若男女が集っている。常連、新聞社のマグダレーナ(白雪さち花)は、マルコスのお気に入り、でもなかなか振り向いてくれない。

バルセロナの悲劇、市民同士の内紛で両親を亡くしたセシリオ(彩海せら)。その後、スペインの植民地であるキューバや、北アフリカのモロッコでは常に軍のクーデターや独立運動の危機が迫っており、スペイン国内の男達は彼らと戦わないといけないのか…。そもそもスペインという国の威信のために、自分の家族を失っていいのか?何を大切に生きて行くべきか、カミーノの面々は悩み語り合う。

セシリオがつるんでいるフランシスコ(彩音星凪)達は、今の政府への不満分子・労働組合の仲間で、最近アナーキストのように過激になっている事を、ロレンシオは気にしていた。セシリオは兄のように慕っていた。

しかし突然、ロレンシオは姿を消し、店に1週間も来なくなった・・・。

ロレンシオが目を覚ますと、そこは侯爵家のお屋敷。秘書ゴメス(輝月ゆうま)と執事アロンソ(蓮つかさ)から事情を聞く。ロレンシオに瓜二つのアルバレス侯爵(鳳月杏)が愛人に撃たれ重傷。復帰するまでの2週間、侯爵のふりをしてくれたら大金を払うと。

実は偽の身分証明書でスペインにいるロレンシオ。弱みを握られ断れない…。新聞に詩を投稿することは続けたい、それを条件に承諾する事になる。

幸い妻パトリシア(彩みちる)はイタリアの実家に帰省中…。と思ったら、突然帰って来ちゃって、みんな大慌て!(このあたりから、なつさんお得意のコメディ入りますよ~😄)

甲高い声と荒々しい気性を演じるが、なんか違う・・・女にはすぐわかるよー。

あなた、本当にニコラスなの?(ガーン、バレちゃった😖)。

事情を知ったパトリシア、このカムフラージュな芝居にしばし付き合う事にする。そもそも夫とは離婚したいと思っているし、ロレンソの優しさや、血の通った瞳をみて、何か自分に通じるものを感じた。

パトリシアは貴族の家柄で、是非自分の足で立って、貧しい人や戦争被害者の為に慈善事業をしたいと考えていた。そこで目にしたのは、”エルピディイオ(希望)”の名で投稿されている、新聞連載の詩。この不安なスペインの情勢下で、どのように考え、悩み、思うか。とても素直な心に沁みる、スペイン人皆の心に共感する詩だった。

貴方の詩で、多くのスペイン人に目覚めよと、希望を与えているのよ。パトリシアは、そうロレンシオに言う。

さて、フランシスコ達は、バルセロナの悲劇の一因であるアルバレス侯爵の暗殺を企てていた😱。計画が成功すればある所から資金が得られると…。その写真を見てセシリオは驚く、ロレンシオにそっくりじゃないかと!

セシリオはマグダレーナに頼んで、アルバレス侯爵の屋敷のありかを知る。忍びこんだら、なんとロレンシオにバッタリ出会う!

えええー何でここに😳?かくかくしかじか・・・・って事で、一同、アルバレス侯爵暗殺計画を知る事となる。

ゴメスやロメーロ大佐(柊木絢斗)と相談し、ここはこの計画に乗って、逆に彼らを捉え、資金源を掴むことになる。予想通り、撃たれた愛人と、この資金源である者が共謀して殺そうとした事が分かった。

侯爵の替え玉を見事演じただけでなく、暗殺を阻止し、敵を見破り(パトリシアのハートも奪う😊)お見事なロレンシオ👏👏。さて、君は一体何者なんだ・・・?

ここでロレンシオの人生を語り始める。父がスペインの軍人だったこと、植民地キューバにいたこと、父は真実を摘発しようとして殺されたこと、植民地の悲惨な状況を見て、自分の名前・エルピディイオを敢えて封印し、スペインに戻ってきたこと…。
彼なりにどのようにこのスペインで生きて行けばいいのか、漂う船にゆらゆら揺られ、思いあぐね、本当の自分をさらけ出せないでいた。しかし、自分を欺くことはどうしてもできない。それで新聞に詩を投稿してきたと。

この告白シーンは皆の瞳がウルウルしていて、感動的だったな~😢。

このカムフラージュに乗っかったおかげで、スペイン国王に軍の在り方について上訴する機会を得たし、自分の名をやっと語れる事ができた。逆にみんなに感謝したいと。まさに、ピンチをチャンスに変えたね👍。

1年後、アルバレス侯爵(ご本人)はすっかり元気になり、例の暗殺事件の乱闘で刺されたセシリオの怪我も治り、カミーノの仲間達、お屋敷の人々もみんなも集まってきた。

パトリシアの慈善事業がスタートし、晴れてロレンシオをお婿さん?(←爵位継承)に迎えてハッピーエンド♬最後に登場した水色の清々しいスーツ姿は、本当に素敵なイタリア貴族のようでしたヨ😍!!

そんな感じだったかなと。

 

『NEVER SAY GOODBYE』のその先

ああ、バルセロナの悲劇だ。ネバセイでスペイン内戦にどっぷり浸かった者として、あの一週間後の続きを見ているのだと思いました。

スペインはバルセロナだけじゃない、色んな個性豊かな地域があって、各々プライドがあって。そしてロマの人たち(ジプシー)もいる。その国民が一つの方向を向く事自体が、しょせん無理な話ではないだろうか?そこを利用した内紛が、戦争の火種となっていたりする。

さち花さん演じるマグダレーナは、女達をまとめて反戦運動を進めます。ここは、留依蒔世 演じたパッショナリアを彷彿とさせるキャラクターに、胸アツでした(涙)。素敵でした!

お国自慢の演出は面白かったです!美味しいもの自慢のネタは、大変面白かった!そのままスペイン料理屋に行きたい気分だったけど。。改めて前菜はピンチョス、メインは皆でパエリア食べて、朝ごはんにはチュロス&ホットチョコレートを飲みたいです☺。

各々を尊重しあえる国の形はあるのか?八百万の神で纏まっていた昔の日本も、そうだったのか。国ごとの成立ち、特徴、色々あるのだなと思いました。

92期同期の真風涼帆はポーランド人としてスペイン内紛を経験し、鳳月杏はキューバに育ったスペイン人として同じ時代を生き抜くロレンシオを演じた。大変、胸アツだなと思っています。

この2人、どちらも安定感抜群で、いい大人の男。飄々としいて、何か影がありそうな、実は熱い物を心に持っている男を演じさせたら、ピカ一でしょう。そしてコメディも最高に面白い!です😆。

誰かの希望となる詩

ポイントポイントで、新聞に連載されている詩を、様々な人が読み上げます。これが本当に心に沁みました。

日本の詩っていうと、なんとなく五七五って感じなんだけど、欧米の方は散文のような感じですよね。普段面と向かって言えない事は詩に託す。自分の偽らない素直な気持ちは、時として様々な人達の心を潤し、目覚めを与え、動き出すきっかけを与えてくれる。

エルピディイオ連載詩集が、見たい!ダウンロードでもいいから、リアルで出版してー。

人を欺いても(他人に成り代わっても)、自分の心は欺けない。

きっと現代の私達も、この2面性を持って生きていると思います。建前と本音。
建前の部分が仕事上では大部分かもしれません。
仕方ない、、ここは嘘の芝居だと思って、演じているという第3者の目を持って、本心までも欺かぬよう、生き抜きましょうよ。

そして、何かの手段を使って、偽名を使ったり、呟いたり、然るべき手段で異議を申し出たり、真実を伝えられるその日まで、チャンスを巡ってくる時を待ちましょう。微力ながら、私もそんなことをちょこっと思ったりして記事を書いてます。

ちょっと脱線しましたね、、はは。

続きはまた後日!

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